クマガイソウの育て方
育てる環境について
育て方として確立したものがなく、1m程度ある地下茎により鉢植えには向いていないため、初心者には栽培が難しいと言われています。また、この地下茎は、鉢植えにしたとしても、その一部が鉢植えに触れてしまうと壊死する可能性があることが確認されています。クマガイソウで鉢植えをしているものを見た時には、タイワンクマガイソウである可能性があります。
タイワンクマガイソウは、地下茎が短いのが特徴だからです。一方で、市販されるクマガイソウは、地下茎が短く切断されているものもありますが、地下茎の回復には時間がかかり、鉢植えになったクマガイソウは、よりその育成が難しいと言われています。自然界の生息地が、森林などの日陰であることから、直射日光に当たる環境には適しませんが、
全く日差しがない環境も好まず、薄っすらと日が当たる環境が適しています。特に直射日光は、葉焼けを引き起こし、葉焼けを起こした場合、翌年の開花が期待できなくなります。葉焼けとは、直射日光の照射により、葉の部分が枯れてしまうことを言い、日光の当て具合の加減が難しいため、上記のような生育環境が整っている場所があったとしても、
最初から遮光ネットなどを使い、日差しを遮ってしまい、管理徹底することをオススメします。その際には、夏は80%の遮光、春と秋には50%の遮光が目安となります。また、風にも注意が必要で、直接風が当たらないように注意します。暑さにも弱い面もあり管理は容易ではありません。寒さには比較的対応しますが、霜や凍結に注意することが必要です。
種付けや水やり、肥料について
種付けから育成することは、ほぼ困難です。一般的にはむしろできないと認識しておいたほうがよいです。通常は、既に育成済みのものを入手し、株分けをします。開花後には、さく果と呼ばれる果実ができ、そこから種子が取れますが、種子に栄養が回ってしまい株が消耗するため、種子を取ることは諦め、開花後は枯れる前に花を切り落としましょう。
乾燥してしまうと萎えるのが早いため、水やりは欠かさず、水切れが起きないようにします。水やりのサイクルとしては、1周間に1回程度で、湿り気を保つ程度で問題ありません。また、鉢植えは特に乾燥しやすいので注意が必要です。肥料については、特段与えなくても、野草用の土壌をホームセンターで購入し、そのまま育てることも可能と言われています。
真夏では、肥料を与えることにより、全体が弱ってしまうことが確認されています。肥料を与える場合には、真夏以外の時期、春頃と秋頃に1,000倍に薄めたものを、10日から15日に1回程度与えます。肥料を与える場合でも、育成環境の狭さから、注意深く見守り、適量を見分ける必要があります。
土壌については、腐葉土を2割程度、鉢植えの場合は、4割程度含ませておくことが目安です。1m程度伸びる地下茎自体ですが、その長さに比べ、柔軟性に乏しく、弱めなため、多少ふかふかの環境で育てたほうがよいと考えられます。肥料のような補助的な要素も必要ですが、そもそもの適応環境を整え、自然に近い状態を維持しましょう。
増やし方や害虫について
増やし方は前述のとおり、株分けが一般的です。繰り返しになりますが、種から育成することは、非常に困難であると言われており、また種子を作る過程で株が消耗することから、種子自体を採取することもままなりません。鉢植えからの植え替えのタイミングなどで、株分けを行いましょう。
また、一般に販売している苗についても、大量栽培などの技術が確立しているものではなく、地道に上記のような育成と株分けでできたものであり、増やす方法が著しく乏しいという状況を物語っています。また、大生息群の例で挙げた山梨県南都留郡西桂町のケースの場合でも、複数人による野草栽培の経験者によって行われており、
一時期には30,000株の育成に成功していたのにも関わらず、5,000株へ減少していることからも、極端にその増やし方の難しいということを垣間見ることができます。また、原産地が日本であると言われている品種ですが、その原産地でも大量栽培の技術が確立しておらず、海外でも数例の実験結果がありますが、和訳されたものの中で有益なものも少なく、未だ十分な研究の結果が得られていません。
しかしながら、成功事例が全くないわけでもなく、今後の研究結果には期待が持てます。このように栽培環境や増殖の難しさがある一方で、病害虫に関する被害はほとんどありません。元来の野草の強さの現れではないでしょうか。栽培の難しさゆえに、開花の際の美しさや愛おしさには格別なものがあり、丁寧に育て上げることが肝心であることは言うまでもありません。
クマガイソウの歴史
クマガイソウの歴史は古く、名前の由来となった熊谷次郎直実は、源氏と平家の争いの中で武功を上げた武士として有名で、日本一暑い街と言われる埼玉県熊谷市の名前の由来にもなった人物です。その頃から、クマガイソウは、日本人にとって親しみのある存在であったことが伺えます。
熊谷次郎直実は、埼玉の出身でありながら、瀬戸内の戦での武功が最もよく知られており、クマガイソウが日本国内で広く確認されていたとも想像できます。現在では、北海道から九州まででその生息が確認されていて、現代の生物学で、昔から広範囲で見られていたことを裏付けられています。
福島県の福島市水原地区、福島県二本松市、山梨県南都留郡西桂町は、3大群生地として知られ、毎年、開花の時期の5月には、ゴールデンウィーク後がピークにも関わらず、毎年、多くの観光客が訪れます。一方で、クマガイソウは、環境省の定めるところのレッドリスト、つまり絶滅が危惧される絶滅危惧II類(VU)の指定を受けており、その保護が求められています。
前述の3大群生地の一つである山梨県南都留郡西桂町の群生地は、昭和45年頃、故池田正純さんを中心に地元の有志の方々が後世に残すために育成を始め、最盛期には30,000株以上あったようですが、現在では5,000株まで減ってきていると報告されています。いずれにしても、古くから親しまれてきた故クマガイソウは、今後の生育環境なども注意深く見守る必要があります。
クマガイソウの特徴
ラン科の植物として有名であり、近い品種としては、タイワンクマガイソウ、アツモリソウなどがあります。クマガイソウの特徴としては、紅紫色の大きな花と扇型の葉があります。草丈は20cm~40cmほどですが、地下茎は1m程度になることもあります。また地下茎は匍匐(ほふく)茎と呼ばれています。この大きさに対して、花は10cmほどの大きさで、日本のラン科の中では、一番大きくなります。
生息は、日本での生息地は、北海道の南部から九州地方と言われ、主に低山の森林によく見られます。その中でも、杉林と竹林に生息し、大きな群れを作ります。この性質から、福島や山梨を代表される大群生地ができあがります。日本以外では、中国、台湾でもその存在が確認されています。
一般的に家庭での育成は難しいと言われ、地下茎が長いことから鉢植えには向かず、園芸の初心者には手が出しづらい品種でもあり、その上、元々は野草であり、自然界での育成こそが最も提起していたのですが、乱獲や森林伐採により生息数が激減し、絶滅の危険が増大している種とされているため、市場の流通量も少なく、
園芸店で入手することは困難であると言われています。これを理由に、自然界に存在するクマガイソウを採取する人も少なからずおり、多年草であることから、1回の採取により、数年がけで育てたのにも関わらず、一瞬にしてその努力が失われることになります。栽培用でなくとも、観賞用に採取することも極力避ける事が、絶滅を避ける手段と言えます。
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