ギンリョウソウの育て方
育てる環境について
日本各地に分布し、山地の林内の落葉のある場所に生えます。自宅で育てる場合、鉢植えなどではまず不可能と考えておいたほうが良いです。ただし、生育環境を厳重に管理して用意してあげれば、栽培に成功した例もあります。それには、まず寄生するための菌類の生育環境を整えることが必要です。
その環境を利用すれば、栽培に成功する可能性はあります。例えば、ギンリュウソウならば木に共生しているベニタケ属がいれば、そこから経由して栄養を得ることができると考えられます。なので、ベニタケ属が蔓延しているような木材を採取してきて、環境を整えてあげれば良いことになります。自宅で栽培するには、菌類の力が必須になります。
腐生植物の多くは森林に生育し、その多くが安定した原生林に近い環境に生育しています。ただ、それ以外にも稀にですが、人間が人工的に作り出した有機土壌などから大量に発生することもあります。基本的には自宅で簡単に栽培環境を整えられる植物ではありません。植木鉢に移植しても、栽培することはまず不可能と言われています。
どうしても育てたいならば、まずは木と共生している菌がついている木材を準備することです。それを利用すれば、多少なりとも栽培の可能性はあります。また、腐葉土がある環境を用意するために、園芸用の腐葉土を使うと良いでしょう。菌のついた木材、腐葉土、湿り気のある場所、という環境を整えて、水槽などにいれて栽培すると良いかもしれません。
種付けや水やり、肥料について
湿り気のある土壌を好むことから、水やりは常に湿り気を保つように行います。水はけと水持ちの良い用土を利用すると良いでしょう。鉢植えの場合には、赤玉土と鹿沼土の混合土などが適しています。それに加えて腐葉土も混ぜ込んであげると良いでしょう。肥料を与えても直接ギンリュウソウが吸収できるわけではないので、置き肥などは意味がありません。
腐植に富んだ用土を用いてあげると良いです。腐植土は、地表にマルチを敷いて、長い時間をかけて少しずつ腐植土を作り出す方法もあります。自然界では落ち葉、微生物、動物の死骸、などが自然に腐植に変化しています。園芸用の素材で人工的に作るならば、腐植化が進んだ腐植酸(泥炭などが好ましい)、ピートモスを組み合わせると良いでしょう。
田んぼがあるならば、稲の収穫終了後に、籾殻+籾殻の0.4%の窒素+カルスをいれて、定植のときまでに土を作っておくと良いです。藁でつくるならば、窒素は0.15%とします。腐植には土壌の緩衝作用を大きくする、イオンの吸着保持力を大きくする、土壌を団粒構造にする、
アルミニウムの不活性化とリン酸の移動拡散、生理活性機能、があります。腐植土の役割を一言で言えば、有機化学物質の動きを活発にすることです。ギンリュウソウは自力で根から栄養を吸収できるわけではないので、まず共生の対象となるベニタケ属の菌に対して腐植土から栄養を与え、栽培していくことがポイントになります。
増やし方や害虫について
ギンリョウソウは育て方も複雑ですが、基本的には地下茎と果実(液果)の中にある種で増やすことが出来ます。開花期以外は地下茎が土中に伸びているので、それを取り出して株分けすれば、増やすことが出来ます。また、花が終わった後の果実を採取して、その中にある種を植え付けて育てることもできます。花が出て来ればしっかりとつきます。
花の状態はそのままで花茎だけが伸びます。地下茎はだいたい4?8月に一番伸び、長いものでは15cmほどに達します。腐植性が高い土壌に株か種を植え付けて、栄養は菌類からの共生に任せます。乾燥してしまうと菌類が弱ってしまうので、湿り気のある日陰に放置するようにします。成長が早すぎる株は花茎が弱く、折れてしまうことがあります。
自立できないようであれば抜いてしまうか、支えになるものを用意してあげましょう。果実をつけさせるためには、雄蕊(ゆうずい)と雌蕊(しずい)をマルハナバチなどの虫に受粉してもらうか、もしくは自分で花粉をつけるようにします。害虫については、あまり心配はないです。
ただ、育てるための用土が有機性に富んでいるため、ニオイがきつく、夏場にハエなどが寄ってくることがあります。ハエは特別花に対して悪さをすることはありませんが、不衛生になりがちですから、駆除しておきましょう。また、あまりにも湿気が多すぎると土の表面がカビたように白っぽくなってしまうので、カビてきたらその部分は取り除きましょう。
ギンリョウソウの歴史
ギンリュウソウは日本原産の腐生植物で、草姿が銀色の龍に見えることから銀竜草という名前があてられています。日本全土に分布しており、山地のやや湿り気のある場所を生息地としています。世界的には、千島列島、樺太、朝鮮半島、中国、台湾、ビルマ、インド、ヒマラヤ、などの場所に分布しています。別名ではユウレイタケとも言います。
根を含む全ての草が生薬の水晶欄になるため、漢方でも使われてきた歴史があります。薬効は強壮作用、強精作用、鎮咳作用、などがあります。属名のMonotropastumeは、ギリシャ語のMonotoropa(シャクジョウソウ属)+astom(似る)から来ています。種小名のhumileは低いという意味があります。
腐生植物は種子植物のなかでも、光合成をするための葉緑素を持たない植物です。そのため、腐生菌と共存してきた歴史があります。菌類と共生することで、栄養素を得て生育してきました。腐生菌は生物の死体などを分解して栄養源とする菌類です。ギンリュウソウは基本的には有機物を取り込んで生きているというよりも、
菌類に寄生して生活してきた植物です。そのため、最近では腐生植物ではなく、菌従属栄養植物という名称が提案されています。ギンリュウソウは腐生植物の中でも代表的な植物として認識されています。ちなみに、他の腐生植物には、シャクジョウソウ、ツチアケビ、コオロギラン、サクライソウ、ホンゴウソウ、などがあります。
ギンリョウソウの特徴
腐生植物の代表で、学名はMonotropastume-humileです。主に山地の湿り気のある場所に生育します。ショウゾウソウ科の多年草ですが、新エングラー体系ではイチヤクソウ科、APG分類体系ではツツジ科に分類されています。森林の林床に生育して、周囲の樹木と外菌根を形成して共生している、ベニタケ属の菌類に寄生して栄養を得て生活しています。
つまり、ベニタケ属の菌類を経由して、樹木が作り出した光合成エネルギー(有機物)を得て生活しているということです。ギンリュウソウの生態が未解明な頃は腐葉土から栄養を吸収していると思われていましたが、実際には自力で栄養を吸収する力を持ちません。短い地下茎と太く絡まり合う根からなる塊を持ち、花が咲く5?8月時期以外には、
その姿を地上部で見ることは出来ません。だいたい4月ごろから地下から花茎を伸ばし始めます。色素を持っていないので、まるで白色のキノコのような形態ですが、花が咲くと柱頭が紺色、茎に鱗片状の葉をたくさんつけます。花茎は集まって出て、枝分かれはせずに先端に一輪だけ花を咲かせます。
ややうつむきがちな花姿です。全体が円筒形で、先端がやや広がり、主に白色をしています。稀に赤色を帯びたものもあります。花の先端には雄蕊(ゆうずい)と雌蕊(しずい)があり、マルハナバチなどの虫媒によって受粉に至ります。花が咲き終わると地上部が黒く変色して、液果(液汁の多い果実の総称)をつけます。
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