ケマンソウの育て方
ケマンソウの育て方
①ケマンソウの育て方のポイントとして、日なたでの栽培は避けてください。葉焼けや生育不良の原因となります。明るい日陰や、木漏れ日が降りそそぐ程度の、涼しくて水はけの良い場所を選んで植えつけましょう。
②ケマンソウは大変丈夫な植物ですので、栽培にあたって特に土質は問いません。水はけの良い草花用培養土や、赤玉土と腐葉土の混合土などを使用してください。肥料の目安として、植えつける前に1㎡あたり150g程度の粒状肥料を混ぜておきましょう。
③春先になると、宿根状態のケマンソウの裸根が販売されています。芽が土の上に出るように、30cm前後の間隔をあけて植えつけてください。鉢植えよりも庭植えの方が、花つき・種つきが良い傾向にあります。
④植えつけを終えたら、春・夏の水やりは、土の表面が乾いたらたっぷりと与えてください。秋・冬の水やりは、土がカラカラに乾きすぎない程度に、控えめにします。庭植えの場合、冬場の水やりはほとんど必要ありません。
⑤より多くの花芽をつけて元気に育つように、肥料を与えましょう。肥料を与える時期の目安は、春に芽吹く前と、秋に花が散った後です。植えつけた時と同じ粒状肥料を土の表面に蒔いておいても良いですし、液状肥料を与えても良いでしょう。
ケマンソウの種付け
①ケマンソウは、温帯から寒帯地域を中心に元々自生している植物です。育て方に特別な注意をはらったり種付けをしたりしなくても、土の中で越冬し、翌年になると同じ場所から芽吹いて花を咲かせます。一般的な栽培方法としては、種付けをするかわりに、株分けや根ざしで増やすことが多い植物ですが、いずれの場合も植え替えの時期に合わせて行ってください。
②株分けして栽培する場合は、小さく分けすぎないように気をつけてください。ひとつの株を2~3株に分けると良いでしょう。根ざしで栽培する場合は、太い根を選んで3cm程度の長さで切り、肥料が入っていない挿し木用培養土に挿してください。
③種付けをして増やしたい場合は、咲いた花をいくつか摘み取って、他の花にこすりつけるようにしてください。特に、虫が少ない都心や室内で育てる場合には、確実に種を収穫するためにもひと手間かけておきましょう。
④花の時期が過ぎ、さやの色が黄土色に変わったら、さやを摘み取ります。摘み取ったさやは、翌年のためにそのまま蒔いておきましょう。翌年になってから蒔きたい場合は、霧吹き等で湿らせた園芸用土バーミキュライトをまぶし、保存用ビニール袋に入れてから、翌年に蒔く時期(春か秋)まで冷蔵庫で保管してください。
⑤育て方のポイントとして、さやを摘み取ったら、すぐに花茎を切り詰めましょう。根に十分な栄養がまわって、翌年の成長や花つきが良くなります。
⑥種付けをしない場合は、一番下の花がしおれ始めた順に、花茎の根元から切り詰めましょう。後から咲く花に栄養がまわり、長く楽しむことができます。また、灰色かび病などの病気にも感染しにくくなりますので、こまめに手入れをしてあげてください。
⑦ケマンソウは根の成長が早いので、1~2年に1度、春か秋に植え替えを行ってください。植え替える際に、太い根を折らないように注意します。また、鉢植えの場合は、冬場になったら寒い場所に置いて管理しましょう。
病害虫の対策
①すす病・・・葉や茎の表面に、黒いすすがついたような症状が出る病気です。光合成が阻害されるため、生育が悪くなってしまいます。植物の汁を吸って育つ害虫(アブラムシ、コナジラミなど)の排泄物を栄養にして菌が繁殖します。芽吹く頃になったら、専用の殺虫殺菌剤を予防散布して、害虫の発生自体を抑えましょう。
②灰色かび病・・・葉や茎に花がらがついたまま放置すると、雨などの湿気でボトリチス菌が繁殖し、褐色のシミや灰色のかびが発生する病気です。花がしおれたら、早めに取り除くようにしてください。
③根腐れ・・・水の与えすぎや、水はけの悪い場所で栽培した場合に、根が腐ってしまう病気です。根の成長が止まって、葉がぐったりとして元気がなくなり、徐々に茶色く変色して枯れてしまいます。水はけの良い場所に植えつけ、適度な水やりを心掛けてください。特に、秋から冬の休眠期には、水を与えすぎないよう注意しましょう。
④アブラムシ・・・春先の成長期になって芽吹く頃に、茎全体に群がる害虫です。見つけたら、殺虫殺菌剤を散布して退治します。休眠期が過ぎた頃に、株元へ専用の殺虫殺菌剤を予防散布しておくと良いでしょう。また、クサカゲロウやナナホシテントウの幼虫は、アブラムシの天敵です。葉や茎に幼虫がついていたら、取り除かないでおきましょう。
⑤アリ・・・直接被害はありませんが、アブラムシの排泄物に群がります。美観を損ねるだけでなく、すす病やウィルス病の原因にもなりやすいので、殺虫殺菌剤を散布して退治してください。
ケマンソウの歴史
ケマンソウの生息地は、森林や谷間などの半日陰を中心に広がっています。中国から朝鮮半島一帯を原産とする、寒さに強く暑さに弱い自生植物です。ケマンソウに似た花を咲かせるアメリカコマクサ(別名ヒメケマンソウ)は北アメリカ原産で、コマクサ(別名カラフトコマクサ)は日本の高山植物です。
栽培が始まった時期については、室町時代に観賞用として渡来した説、江戸時代に渡来した説などが伝わっています。現在、日本国内で自生している場所は、主に山地の林床や渓谷などが中心となっています。
日本では、ケマンソウに比べ、コマクサの知名度が高い傾向にあります。コマクサが、他の植物が生息しないような厳しい高山環境に自生し、「高山植物の女王」と呼ばれていることが一因とも言えるでしょう。
ケマンソウの花言葉が「あなたに従う・従順・恋心・冷めはじめた恋・失恋」などの大人しいイメージであるのに対し、コマクサの花言葉は「高嶺の花・誇り・気高い心・貴重品」などの強く高貴なイメージが当てはめられています。
また、花や葉の形が似ているとして、キケマン・ムラサキケマン・ツルケマンなどの名称がつけられた植物も多く存在します。いずれも山林や野原などの半日陰を中心に生息していますが、ケマンソウとは属性が異なる植物です。
ケマンソウの特徴
属性は、ケシ科コマクサ属の宿根多年草に分類されています。草丈が30~60cm程度の植物で、釣竿のように伸びた茎に、ハート型に似た10~15個程度の可愛らしい花を咲かせます。花の色は、赤・白・桃色があります。
花の形が、仏堂の欄間にかける華鬘(ケマン)という装飾品に似ていることから、その名がつけられました。また、花が一列に連なって咲く様子が、釣竿にぶら下がる鯛のように見えるとして、別名タイツリソウ(鯛釣草)とも呼ばれています。
日本では、主に鑑賞用として栽培されることが多い植物ですが、根茎に含まれるアルカロイド系物質(プロトピン、ケレリトリン、ビククリンなど)に鎮痛・解毒作用があり、薬用・医療用の原料としても使用されます。
ケシ科コマクサ属の植物に共通する特徴として、アルカロイド系物質には毒性があり、誤って食した場合、嘔吐・下痢・呼吸不全・心臓麻痺などの症状を引き起こしますので、取り扱いには注意が必要です。
また、耐性としてマイナス15度の気温にも耐えるほど、寒さには非常に強いという特徴があります。逆に、暑さには弱い植物です。病害虫の心配はほとんど要りませんので、植えつける場所さえ気をつければ、比較的育てやすい植物と言えるでしょう。
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