ブラシノキの育て方
育てる環境について
晩春から初夏にかけて小さなブラシのような華やかな赤花を咲かせるブラシノキは、最近は日本でも庭木として多く見られるようになってきました。オーストラリアの半砂漠が原産地であることから、暑さに強く乾燥にも耐え得る植物です。ブラシノキの育て方としては、
植えつける場所には水はけがよく風が強く当たる場所は避けて選びます。 日陰でも生育しますが花つきが悪くなりますので、なるべく日光の当たる場所がよいでしょう。あまり乾燥しない肥沃な土壌を選んだ後、堆肥や完熟の腐葉土をすきこんだ土に浅めに植え付けましょう。
水はけがよければ、特に土質は選びません。赤玉土の中粒2に、完熟腐葉土または樹皮堆肥1の比率で混ぜたものなどを使います。植えつける適期は気温が上がり始める4月中旬から9月の間です。庭植え、鉢植えともに、植え穴または鉢底に有機質肥料か緩効性化成肥料を元肥として施して植えます。
移植を嫌う植物で、一度地植えにしたら他の場所に移動させるのが難しい植物ですので気をつけましょう。移植を行いたい場合には、ポットでの育成中できるだけしっかり根が張ってから大きめのポットに移し替えるようにします。 苗木や植えてまもない若い株は、
冬の乾いた冷たい風に当たらない場所に置いておきます。成木も寒風に当たると葉が傷みますので、北風は当たらない場所に植えつけましょう。暖かい土地原産のブラシノキですが、寒さにもある程度強くマイナス5度ぐらいまで耐えうる植物です。
日本でも暖地にあたる関東地方南部より南では、日当たりの良い所であれば庭木で越冬できます。寒冷地では鉢植えで管理し、冬には室内などに取り込んであげましょう。
種付けや水やり、肥料について
種植えは4月中旬頃おこなうとよいでしょう。水やりは、植えつけ後2年未満の株の場合、鉢植え・庭植え共に土の表面が乾いてからたっぷりと水をやります。その後は庭植えで2年以上たった株なら特に水やりの必要はありません。鉢植えの場合、4~10月は土の表面が乾いてからたっぷりと水やりをしてあげます。
11~3月の寒い時期は、潅水をできるだけ控えて乾燥気味に管理していきます。乾燥に強い植物ですが、あえて乾燥させる必要はありません。水切れでも枯れやすいので、水切れを起こしやすい夏の暑い時期はたっぷり水を与えてあげてください。
肥料は庭植えでは、2月ごろ寒肥として有機質肥料または、油かすと腐葉土や堆肥を株周りに穴を掘り元肥として与えて、他は必要ありません。鉢植えの場合は、春先の3月に化成肥料を株元に追肥してから、開花後の6月頃の年2回化成肥料を少なめに与えていくことになります。
寒肥は2月に生育が良いときは控えめにします。成長後の剪定については、自然に樹形が整うので毎年行う必要はないでしょう。剪定せずに放任しても美しい自然樹形を作ります。刈り込みにも耐える植物ですので、剪定したい場合は冬頃に行うのが適当です。
春から伸びた新梢の先に開花するので、新梢が伸び始める前の3月上旬頃がよいでしょう。選定をする場合には、古い枝や枯れ込んだ枝を生え際で切りとります。茂りすぎると下枝が日照不足で枯れ込みますので、
適度に枝を間引いて樹冠内部まで日差しが入るようにすると下枝の枯れ込みが減っていきます。強めの剪定でもよく芽吹きますから、こまめに刈り込んでスタンダード仕立てにしてもおしゃれです。
増やし方や害虫について
種まきとさし木で増やしていくことができ、種まきのほうがさし木より易しい方法となります。種は1年後に熟しますが、樹上についたままであれば4年ほど発芽可能です。種まきから増やす場合は4月が適期で、花が咲き終わった後しばらくすると、
枝に古い瘤のような又は虫の卵のような小さな固い実がついておりそこに種子が詰まっています。その中から今年~3年前くらいまでの間になった果実を枝から選び出していきましょう。枝からナイフで剥がして、果実を縦切りにしたりなどで割って種を取り出していきます。
中にはぎっしりと種が詰まっていますので、種子を傷つけないよう爪楊枝などで気をつけて取り出していきましょう。土に播いた後の発芽率はよいブラシノキですが、最初の花が咲くまでが時間がかかります。最初の開花までは早くても3~4年はかかりますので気長に待ちましょう。
親木と同じ形質をもつ株をふやしたい場合は、さし木で増やす方法が適当です。適期は6月~7月頃、樹皮が固くなる直前の固まる手前の枝が適しています。今年から伸びた若い枝を10cmくらいに切り取り土に挿していきます。根付きはあまりよくない方なので、多めに挿しておきましょう。
木が大きくなってからのことを考えて、充分スペースのとれる場所を選んで植えてください。ブラシノキには病害虫はほとんど見られませんが、近年の気候変化で発生する年もあるようです。発生したら消毒及び駆除してあげましょう。
ブラシノキの歴史
フトモモ科ブラシノキ属するブラシノキには34種類あるといわれ、オーストラリア全域からニューカレドニアが生息地です。低木から高木の常緑性花木で樹高2~5mに成長するものが多いですが、原産地であるオーストラリアでは10m前後まで育つ品種も存在しています。
有名な赤い花のほかに、白い花、ピンク、黄色の栽培品種も出回っており、"八房金宝"と名付けられた日本生まれのものも売られています。明治時代に日本に渡来したブラシノキは色々な別名をもっています。和名のブラシノキは長さが10cmにもなる穂のような花姿から、
ビンや試験管などを洗うブラシに似ていたことからつけられたものです。英名でも"Bottle Brush(ボトル・ブラッシュ)"という名がついています。"カリステモン"とも呼ばれますが、その名はギリシャ語で"美しい雄しべ"を意味する言葉からきています。
雄しべの赤い花糸の先端が金粉を付けたように黄色くなることから"金宝樹(キンポウジュ)"という美しい別名もあります。また葉が細長くて針葉樹のマキの葉に似ていることから"花槙(ハナマキ)"と呼ばれるものもあり、ブラシノキ・キトリヌスという品種です。
日本の切手の図案にも選ばれたことがあるブラシノキは、2006年の日豪友好協力基本条約締結から30年に当たる年に日豪交流年を記念した80円切手シートの図柄に選ばれたこともあります。切手の図柄10枚にはオーストラリアの自然や動植物などを描いたものが採用されました。
オーストラリアの国花はアカシアの一種であるゴールデンワトルですが、ゴールデンワトルと共にの植物の図柄でブラシノキが選ばれており、オーストラリアを代表する樹木として選出されたのです。
ブラシノキの特徴
ブラシノキの最大の特徴はその花の形にあります。オーストラリアや熱帯アメリカを中心に分布するフトモモ科の植物の花は、花糸がよく目立つ植物が多く日本の植物とは異なった趣きをもっています。ブラシノキの中で観賞用として栽培されているのは数種類で、
よく見られる赤い花のほかには白からクリーム色の花(雄しべ)を咲かせる品種が出回っています。一般に赤い花を咲かせる樹木は2~3mほど、白色のものは5~12mの樹高に成長するといわれています。日本でよく見られるブラシノキは暖地での栽培が多く、高さ2~3mに成長するものが主でしょう。
5~6月頃に開花する花の花弁は緑で小さく目立ちませんが、赤い長い花糸が目立つものとなっています。本年枝の先には、長さ5~10cmの穂状花序をだし花弁や萼は開花後すぐに落ちていきます。残った多数の雄しべが、赤いブラシのように見える無数の雄しべとなります。
ブラシのように見える花穂の先から新しい芽が出て、本年枝が伸びていくのもブラシノキの特徴のひとつです。花が終わっても本年枝はさらに伸び続け、枝には小さくて丸い粒々の実が枝を取り巻くようにびっしり付くようになります。
茎にグルリとついている果実は2~3年は残って、種はいつまでも枝にへばりついています。それが数年間付いたままになっていることもあるのは、同じオーストラリア原産のユーカリと同様に森林火災で実がはじけ種子が風に乗って運ばれる仕組みとなっているのです。
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