タイリントキソウの育て方
育てる環境について
タイリントキソウはやや湿り気のある苔むした環境を好みますので用土(鉢植え)には、水はけがよい粗い砂系の用土に、水もちのよい水を含みやすい山コケ、またはヤシ殻チップの細かいものなどを少量(2~3割程)混ぜたものが適しています。
深植えは避けて、球根が半分以上見える程度の浅植えにします。タイリントキソウは球茎に十分栄養を与え、充実した株にするために、花が終わり、やがて芽が出て葉が延びる5月いっぱいまで日光に十分当てて育てます。生育初期の成長は翌年の開花にも大きく影響するので、
よく日光に当ててしっかりとした株を作ることが大切です。またタイリントキソウは春咲種の植物なので、暑い夏の日は温度の高い場所は避け、できるだけ風通しの良い涼しい場所で育てることも大切で、25度以下で管理します。またマンションの高層階などでは
乾燥させないように葉に水をかけたり、人工芝や鉢周りに打ち水をして湿度を高めておく工夫が必要です。冬場の管理としては、冬の越冬温度は5℃~10℃です。晩秋から早春にかけて葉は落ちて完全休眠に入りますので日に当てる必要はありません。
室内に入れて凍らせないようにすれば冬を越すことができますが10℃程度の気温を維持できた方が春はより早い時期に芽を出して、秋までの生長期間が長くなるため、より充実した大きな球茎を育てることができ、結果として花付きが良くなります。
冬は、凍結や霜に気を付けます。。休眠中の冬は、関東地方南部以西の平地なら戸外で冬越しが可能ですが、その場合、霜よけの防霜シートをかぶせておくようにします。
種付けや水やり、肥料について
種付けや水やり、肥料などタイリントキソウの育て方についてご紹介したいと思います。植え替えは毎年、休眠期間中に行います。タイリントキソウの場合は11月から2月となりますが新芽が出てくる時期が植え付けの際に芽が伸びる方向にスペースを確保できるので最適です。
スペースを確保できると新芽が伸びて葉も大きく開くことができるので見栄えも良いです。鉢は小さめのものが適しています。3号鉢の場合、3~4球が目安です。古くしなびた球根があれば取り除きます。株を固定するために古い根は少し残した状態で植えつけをします。
深さは球根の下1/3から半分弱が隠れ、新芽が少し見える程度が最適です。球根がぐらぐら動いて安定しない場合は新芽をよけて針金で固定しておきます。次に水やりですが春に根が出始めてから葉が出ている間は、土の表面が乾いたら十分に水を与えます。
また葉が完全に成長するまでの6月末ごろまでは、上から直接水をかけず、株元へそっと水やりをします。葉がすっかり成長したあとは、直接葉に水をかけても問題ありません。また暑い夏の間は日中や夕方に葉水を与えて温度を下げるようにします。
また休眠に入ったら今度は用土を逆に乾かし気味にします。次にタイリントキソウに与える肥料ですが固形肥料(油かすなど)を春に根が出始めてた頃から、葉が成長している6月末頃までの間に3号鉢で1個を月1回施し、また2000倍に薄めた草花用の液体肥料も月3回施すようにします。
その後株が成長し終わった7月から10月の間は、3000倍に薄めた液体肥料(リン酸を多く含んだもの)を月2、3回施します。夏の終わりから秋にかけては、チッ素を含まない液体肥料を施します。休眠の間は肥料を与えなくても大丈夫です。
増やし方や害虫について
タイリントキソウの増やし方は分球による繁殖とムカゴによる繁殖の二通りがあります。分球による株分けの繁殖ですが、夏から秋にかけて古い球根から高芽が1~3つ出てきます。この高芽を晩秋ころに取り外します。取り外した球根は、袋に入れて植え付けまで寒い所で管理します。
球根は、植え替えの時、枯れた親球を取り除く際に自然に分かれます。芽が出たら植え付けます。植え付けは、植え替えの時と同様にあまり深く植えすぎないように注意し、底の部分が少し隠れる程度の浅植えにします。その後通常の株を育てる方法と同様に育てると
3年くらいで花が咲く大きさの株になります。一方、植物の栄養繁殖器官のひとつであり、また植物の芽の一種で、地上部に生じるムカゴですが、球根から伸びた茎の頂点近くについたムカゴはタイリントキソウが休眠に入るころに自然に離れます。これを袋に入れて、
植え付けの時まで大切に保管しておきます。 タイリントキソウは屋外で栽培できる丈夫で繁殖力も強く育てやすいランです。ムカゴを土に植えると約3年で開花します。最後に気を付けないといけない害虫についてですが、ハダニとナメクジの2種類が挙げられます。
ハダニは夏などの高温で乾燥しているときに発生しやすい害虫です。主に葉の裏側に付いて栄養分を吸い取ります。大量発生すると葉が白っぽくなってしまいます。ハダニが発生する根本的な原因は低すぎる空中湿度なので栽培環境を改善するようにします。
湿度のある場所を嫌いますので、水やりの際には葉の表裏にも霧吹きなどで水をかけて予防すようにします。またナメクジは、新芽やつぼみを好み、花芽などの柔らかい部分を食害することもあるので、置き場所には気を付けるようにします。
タイリントキソウの歴史
タイリントキソウは別名タイワントキソウとも呼ばれています。球根性の小型のラン科の植物でプレイオネ属の暖地性の多年草です。古くは台湾から流通していましたが、台湾と中国東部が原産です。主な生息地は台湾および中国南部ですが、台湾では標高1500~2500m、
中国大陸では600~1500mの山地の湿った岩壁などに自生しています。プレイオネ属に属する植物は暑さに弱く、また花の咲く時期によって春咲き種と秋咲き種に分けられますが、タイリントキソウは春咲き種になります。主な原種、園芸品種としては、
藤色から青紫色の上品な色合いの花を咲かせるセルレア、またカトレアのような美しい花を咲かせ、戦前より多くの系統が伝えられている耐寒性のある白花品種、ヒマラヤ東部から中国南西部の標高600〜1600mに自生しているプレイオネ・マクラータ、
また中国・雲南省から四川省南西部、ビルマ北部の標高2000〜2500mに自生しているプレイオネ・リンプリヒティー 、中国、雲南省の西部からビルマにかけての標高1400〜2800mの森林に自生し、和名でキバナトキソウ(黄花朱鷺草)と呼ばれ、タイリントキソウ属のなかでは唯一、
黄色い花を咲かせるプレイオネ・フォレスティー 、そして薄いピンク色の花を咲かせ唇弁が白色の中国南部に自生しているプレイオネ・チュニー 、さらに中国南部から南西部の標高900〜3600mに自生しているプレイオネ・ブルボコディオイデスなどが挙げられますが、更にはいくつかの斑入りの品種も知られています。
タイリントキソウの特徴
タイリントキソウは3~5月頃に花の見ごろを迎えます。春に新芽が現れ5~7センチのきれいな花を咲かせます。タイリントキソウの花はとても美しいので昔から人気があります。形状は5弁の花で、唇弁には切れ込みがあって、まるでフリルのようでとても可憐でかわいらしいです。
また花はひとつの芽に対して通常は1輪咲きます。タイリントキソウの花の色は白色や青紫色、紅色、そしてピンク色、黄色などがあります。球根(バルブ)からは通常2本の新芽が伸び出し、茎の頂点近くにムカゴがつきます。タイリントキソウは単体ではなく、
群生させて植え込むととても見栄えがします。またクロッカスのように花が咲き終わってから、葉がよく成長するという性質があります。花が終わった後に親球根の側面から新しい葉が伸びはじめて、その根元に新しい球根ができます。翌年も花を楽しむためには、
この球根を十分に太らせる必要があります。葉は一つの茎に対して1枚だけつきます。葉の形状は細く、長さ15cm前後の笹の葉のような形をしていて、目立った縦じわが入っています。また草丈は20~25㎝になります。秋になると葉は落ち、そのころには親球根や根も枯れて、新しい球根だけになります。
そしてやがて休眠します。タイリントキソウは生長期と休眠期が顕著にはっきりと分かれている植物です。そのためそれぞれの季節ごとの生育に合わせた栽培方法がとても大切です。タイリントキソウは丈夫ですので通常の管理を怠らなければ、毎年花を楽しむことができます。
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