シモツケソウの育て方
育てる環境について
シモツケソウは耐寒性が高く日陰にも強い植物なので、明るい日陰かで充分育てられます。また午前中は良く日の当たる半日陰でも良いでしょう。庭植えで育てる場合は日の当たる場所でも構いませんが、乾燥しがちな場所は避けるのがベターです。
シモツケソウを鉢植えで育てるときは、一般的な花壇に使われるような草花用の培養土でよく育ちます。特別な用土を用意する必要はないので、園芸初心者にもおすすめの品種となっています。庭植えにする場合は、10cm~20cm程度土を盛って植えると、さらに生育が良くなってくれます。
上手な育て方のひとつとして欠かせないのが、枝の間引きです。枝や葉が密になりすぎて風通しが悪くなると、株の内側が蒸れ、害虫の被害を受けやすくなったり、病気に気づきにくくなってしまいます。枝が込み入ってきたら、太い枝を株元20cmくらいの位置で切り落として間引きします。
古い枝を切ることで元気な新しい枝が伸びるようになり、株全体が若返っていきます。若い枝の方が枝分かれしやすく、花付きも良くなります。間引きに適した適期は2月頃です。なぜなら、元々伸びていた枝だけでなく春になって伸びた枝の先端にも花が咲くので、
間引きの失敗で花が咲かないという事態を避けるためです。シモツケソウはほったらかしていても自然に形がまとまる植物なので、毎年切る必要はありませんが、もし形を整えたい場合には、3年に1回くらい、枝を半球状に刈り込んだり間延びした枝を切り落とします。
種付けや水やり、肥料について
水やりに関しては、表面の土が白っぽく乾いてきた感じになれば、十分に水を与えるようにします。冬の落葉する期は、土の表面が乾いて何日か経過してから水を与えるようくらいで、少し乾燥気味を心がけます。鉢植えで育てる場合、乾燥しやすい夏の間は、
二重鉢にして乾燥を防ぐのもおすすめです。庭植えで育てる場合は、夕方になってもしおれて弱っているようなら水やりをします。0度を下回らなければ越冬できる植物ですが、乾燥には注意します。シモツケソウは水はけが良く腐植質に富んだ土が適しています。
さらに肥料を施すことで、よりスムーズに生育してくれます。シモツケソウに適した肥料のやり方は、植え替えのときに元肥として、カリが多めの緩効性肥料とリン酸を、5号鉢に対してで2つまみほど入れることです。その後4月~10月にかけて月2回程度のタイミングで、
草花用の液体肥料を薄めてまきます。真夏は2000倍に、そのほかの時期は1500倍くらいに薄めると良いでしょう。庭植えの場合はさらに手入れは少なくて大丈夫です。特にやせ地でない限り、元肥のみでも充分良く花を咲かせます。また、枝を思いきり刈り込む予定がある場合は、
その前年に肥料をまいておくと、刈り込み後に枝がぐんぐん伸びるようになるのでおすすめです。種を採集しないときは、咲き終わった花を摘み取る花がら摘みをしましょう。花が咲いた後こまめに花がらを摘み取ると、次々と花が開花していくので、長期間花を楽しむことができます。
増やし方や害虫について
シモツケソウの増やし方としてポピュラーなのは、株分けです。株分けは植え替えのタイミングで行います。適した時期は3月~4月の春の時期と、9月中旬~10月中旬花が終わった後の秋の時期です。栽培しやすいことからも分かるように、株分けでも簡単に増えます。
株分けのやり方としては、古くなった根茎を自然に分かれる部分で分けます。もし繋がっている場合でも、それぞれの芽にある程度の根が付いていれば、ナイフなどで切り分けてしまっても大丈夫です。また、多くの植物で行われる種まきから増やすことも可能ではありますが、
シモツケソウの場合はあまり一般には行われていない方法です。植物を栽培する際に、よく注意しなければならないのが病気と病原虫です。基本的にシモツケソウの性質は丈夫で、育てるのは容易な部類に入るあまり手のかからない植物ですが、
シモツケソウにとって防がなければならない病気は、うどんこ病です。これは5月から8月の夏の時期、葉の表面に白い粉をかけたようにカビが生える状態です。重症化することはあまりありませんが、見た目はよくないので、防ぐのがベターです。
また病害虫として挙げられるのは、バッタ類です。例えばショウリョウバッタモドキなどが、葉を食べてしまうことがあるので、見つけたときは捕まえて、虫が付かないように薬剤を散布するのもおすすめです。水まきや肥料をまく際によく観察して、病害虫の発生を事前に防ぐことが大切です。
シモツケソウの歴史
シモツケソウとはクサシモツケ(草下野)とも呼ばれる、バラ科シモツケソウ属の植物です。学名をFilipendula multijugaといいます。Filipendulaは、ラテン語の 「糸が吊り下がる」という言葉が語源となっており、これは根の形が、糸で玉をつないだように見えることから付けられています。
すらっとした姿の美しさから、高原の女王とも称されます。8月22日の誕生花となっており、花言葉は「控えめな可愛さ」「純情」という、可憐な植物です。花もちが良く、またその愛らしい咲き方が上品なので、昔からよくお茶席に飾られていました。
シモツケソウと同じシモツケソウ属の植物には、コデマリ(小手毬)や シジミバナ(蜆花)、 シモツケ(下野)、 ユキヤナギ(雪柳)などがあります。日本でシモツケソウの群生地として有名なのが、滋賀と岐阜県境にある伊吹山です。
伊吹山一帯の花畑は国の天然記念物にも指定され、地元の住民らが保全活動をしていますが、近年その群生数が減少しており、最盛期の半分程度となってきています。群生の減少原因としては、地球温暖化の影響や、野生動物による食害などが考えられていますが、
そのはっきりした原因は分かっていません。現在では、ふもとの住民や市民団体などによって、地中に残った苗を植え直したり、金網で囲ってシカやイノシシなどの対策を施したりと、シモツケソウの数が再び戻るよう、さまざまな努力が続けられています。
シモツケソウの特徴
シモツケソウは日本原産の固有種で、本州の関東地方から九州にかけてが生息地となっています。山地や亜高山の草地、林の縁などに群生して見られます。草高30cm~80cmの多年草です。最初の花が枝先に付いて、その下にどんどんと側枝が出て花が付いていく集散花序の形で、
5mm程度の小さな花が花房を形成します。 シモツケソウの花の色は、淡い紅色が多くなっていますが、比較的濃淡があるので、濃い紅色のものもあれば白色のものもあります。 花びらは5枚で円形です。 たくさんの雄しべが花冠から飛び出しているのも特徴です。
葉は奇数で、鳥の羽のように左右に葉が並んで、先に1つの小葉が付いて1枚の葉となっている羽状複葉で、また互い違いに生える互生では、上部の頂小葉が大きく、5つから7つに裂けています。果実はそう果で、熟すと赤くなります。
一輪一輪を観察するのも小さく可憐で印象的な植物ですが、夏の花が真っ盛りの時期、シモツケソウの群生地では、ピンク色のじゅうたんを広げたように一面鮮やかな色で包まれます。高山の群生地では、この風景を目当てに多くの観光客が訪れます。
花が終わりに近づくと、花びらや花序の枝などが紅褐色に色づきます。同じシモツケソウ属の植物であるシモツケ(下野)とよく似ていますが、 シモツケ(下野)は木であるのに対し、シモツケソウは草となっています。開花時期は6月から8月の夏の時期で、寒さや日陰に強い品種なので、盆栽などにも向いています。
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