グロキシニアの育て方
育てる環境について
育て方は鉢植えでの室内栽培です。暑い国から来た植物ですが、カラッとした暑さを好むので日本の蒸し暑い夏は苦手です。夏場は風通しの良いところに置いておく必要があります。しかし、室内であっても強い日光を避ける必要があるため、西日が差す窓際には置いてはいけません。
特に、葉に直射日光が当たると葉が焼けてしまいます。かといって暗すぎても茎の太りが悪くなりますし花も付きにくくなるので、朝日が差すところかレースカーテン越しの日差しが当たる場所が良いでしょう。また、雨が大嫌いですので雨の降る時期には突然の降雨による雨粒の降り込みに十分に注意し、
葉や花に雨粒がかからないようにしましょう。とはいえ、空気自体は湿潤な方が好みですので、空中湿度が高い環境自体は喜びます。生育に最も適した温度は20℃から25℃で、15℃以上の環境であれば冬でも生育し花を咲かせることもありますが、15℃以下では地上部が枯れて球根になって休眠します。
気温が下がってくる秋頃から徐々に活動が鈍くなり、休眠中はほぼ活動を停止します。休眠中はやや耐寒性が高まりますが、5℃以下の気温には耐えられないので気を付けてください。多年草なので、適温維持と球根を乾燥させないことにだけ気を付け、
そのまま植えたままにしておけば、温度が上がると再び活動を始めます。グロキシニアは温度管理が必要な花ですが、室内栽培ですし生育可能な温度帯も比較的幅広く、人間が過ごしやすい温度とも重なります。育て方としては、難しく考え過ぎずに人間も一緒に快適に過ごせるような環境を作ってあげると良いでしょう。
種付けや水やり、肥料について
グロキシニアは発芽条件に制約があるので、初夏に苗か鉢花の形で流通するのが一般的です。鉢花の場合はそのまま育てても構いませんが、苗は植木鉢に植え付けましょう。それほど大きくならない花なので、苗より少しゆとりがある大きさであれば構いません。
葉脇から花を咲かせるので、苗を選ぶ時は蕾の数だけではなく葉の枚数も多いものを選ぶとたくさんの花を咲かせます。土は水はけと通気性に優れた土が適しています。市販の草花用の培養土を使う場合は、水はけと通気性に優れるという表記があるもので、
川砂かパーライトが配合されているものを選んでください。配合されているものが見つからなければ、別途単品購入して追加で配合し直しても構いません。一から自分で土を作る場合は、小粒の赤玉土、腐葉土、川砂またはパーライトを5:3:2の割合で配合します。
基本的な育て方として、水はどちらかと言えば控えめで構いません。土が乾いたら与えますが、葉や花に水がかからないように、植木鉢の縁にジョウロの注ぎ口を当てて、根元の土にだけ静かに水を与えましょう。水受けに水を与える底面給水にしても構いません。
いずれにせよ、開花中はやや多目にして、気温が下がり活動が鈍くなったら徐々に水を減らし、球根になったら完全に給水を止めて土を乾かし気味にします。土がひどく乾いてしまうようなら少し湿らせて保湿してください。
水やりを再開するのは4月で、ちゃんと保管できていればすぐに目を伸ばし始めます。肥料はあまり必要としませんが、生育を始める4月から開花時期の終わりにかけて草花用の液体肥料を与えると、花付きや花持ちが良くなります。
増やし方や害虫について
葉挿し、種蒔き、分球、挿し芽によって増やすことができます。最も簡単なのは葉挿しです。6月から7月または9月から10月に、株の中でちょうど中くらいの大きさの葉を付け根から葉柄をつけたまま切り取り、湿らせたバーミキュライトに寝かせるように挿します。
土を乾かさないように水をやりながら1ヶ月ほどすると発根し、やがて小さな球根をつけます。そのまま花と同じ様に温度に合わせて水を管理しながら育てると、冬になる頃には葉が完全に枯れて球根ができます。あとは乾燥させないように土中か保湿できる環境で休眠させ、4月に植え付けます。
植え付け方は球根が隠れる程度の浅植えです。種で増やす場合、発芽温度が25℃前後と高いため、種を蒔ける時期がかなり限定されます。8月から9月までの間に植えるようにしましょう。発芽に光を必要な好光性種子ですので、土は被せません。
分球は、冬を越して大きくなった球根を、新しく出てきた芽の位置を基準に切り分けるという方法です。切り分けた球根は葉挿しでできた球根と同様に植え付けできますが、雑菌が入らないように切り口に殺菌剤をまぶしておく必要があります。
また、球根の余分な芽を少し成長させてから採取して土に挿す挿し芽という方法もあります。うまくいけば生長が早く、同年の秋には花を咲かせます。環境さえ整えておけば基本的に害虫や病気には強い植物です。ただし、「灰色カビ病」にだけは注意してください。灰色カビ病はその名のとおり株に灰色のカビが生える病気です。
特に花弁や新芽から発生しやすく、患部に斑点が発生し徐々に褐色に変色しながら拡大、やがて灰色のカビが発生して株全体を腐敗させてしまします。高温多湿な環境で発生するので風通しを良くすることと、枯れた花弁はこまめに摘み取り、分球などの際には切り口をきちんと殺菌するなどして株を清潔に保つことで防止できます。
グロキシニアの歴史
グロキシニアはブラジル原産の常緑または宿根性の花です。ただし、現在グロキシニアとして一般に出回っているのは、野生の原種をもとに種間交配によって品種改良を重ねた園芸品種です。自然に自生している原種は学名ではシンニンギア・スぺシオサ、和名ではオオイワギリソウといい、
和名のとおり熱帯雨林の岩の上や崖などを生息地としています。1785年に発見され、当初は新種の植物としてグロキシニア属という独立した属に分類されていましたが、現在ではシンニンギア属に分類されています。しかし、グロキシニアの名が浸透していたため、
現在でもシンニンギア・スぺシオサをもとに品種改良された園芸品種群の総称としてグロキシニアという名前が使われています。特にヨーロッパでの品種改良が進み、原種が下向きに花をつけるのに対して、上向きに花をつける受け咲きの園芸品種が広く出回っています。
また、日本に渡来したのは明治初年とされています。この花にまつわる逸話として、作家・高村光太郎氏のアトリエが完成した時に妻の智恵子氏が記念にこの花を贈ったというものがあり、高村氏の代表作のひとつである「智恵子抄」の一節にも登場します。園芸の世界では当初は温室栽培が主でしたが、その豪華な花姿から人気が高まり、
のちに家庭でも広く栽培されるようになりました。夏に美しく咲き誇る姿から、かつては冬の女王と呼ばれるシクラメンと対比して「夏の鉢花の女王」と呼ばれていました。現在は一時期に比べると人気が落ち着いていますが、見た目の美しさに加えて、室内での育成に向いていることから観葉植物として親しまれており、「室内園芸植物の女王」とも呼ばれています。
グロキシニアの特徴
多年草で、草丈は10cmから40cmと低めですが、豪華な見た目で存在感のある品種です。6月から10月に葉の脇からラッパ状の花を複数咲かせます。花弁はベルベットのような光沢を持ち艶やかで、色は赤、ピンク、紫、白などカラフルで、咲き方も一重と八重があるほか、
模様もふち取りが入る覆輪咲きや斑点のあるものがあり、バリエーションに富んでいます。放射状に伸びる葉はふちがギザギザした楕円状で幅が広く肉厚で、表裏両面に柔らかな毛が生えており、色は落ち着いた濃い緑で花弁とのコントラストが際立ちます。
上品な華麗さを持ちながらもどこか色香を匂わせており、花言葉も華々しさや妖艶な雰囲気を連想させるものばかりです。性質は寒さに弱く直射日光も雨も嫌いで、高温多湿を好むものの日本の夏は暑過ぎるようで少し苦手です。そのかわり、少々日陰になる場所であってもそれなりに育ちます。
そのため、日本での育て方は外に出さずに室内栽培の方法を取るのが主流です。特に寒さは大敵で、気温が15度を下回ると成長が止まり休眠状態に入ります。適切に温度管理ができている室内であれば、一年中栽培することができます。湿気を好みますが、原種が岩場に咲く花なので水そのものが潤沢すぎると痛みやすくなります。
特に花や葉に直接水がかかってしまったり根元に水が溜まってしまったりすると腐りやすくなりますので、水やりの際には注意が必要です。休眠期は水を一切欲しがらず、生育期や開花期にはたくさんの水を要求しますので、様子を見ながら季節に合わせて世話をする必要があります。
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グロキシニアの科名は、イワタバコ科 / 属名は、シンニンギア属となり、和名は、オオイワギリソウ(大岩桐草)といいます。グロキシニアはブラジル原産の常緑または宿根性の花です。ただし、現在グロキシニアとして一般に出回っているのは、野生の原種をもとに種間交配によって品種改良を重ねた園芸品種です。