エキノプスの育て方
育てる環境について
ヨーロッパからアジアまで広く分布するエキノプスは、暑い環境でも寒い環境にも耐えることができるので、日本で北海道から沖縄まで全国的に育てやすい植物です。しかし、エキノプスは大きな花を咲かせるために、葉からたくさんの太陽光を吸収して成長のための栄養素をつくる必要があるので、
日照時間の多い土地ほど育ちやすい傾向があります。このため、花壇をつくるときになどには、一日中太陽光が当たるような日当たりのよい場所を選ぶのが理想的な育て方ですが、一定の日照時間を確保できれば十分に育つので、どうしても場所が確保できない場合には
一日数時間だけ太陽光が当たるような半日陰の場所でも問題ありません。エキノプスはゴボウのような太い根を地中深くまで伸ばして根を張る性質を持っているので、花壇や菜園に植えるときには、事前に深く耕して土壌を柔らかくして根を張りやすくする必要があります。
この植物は乾燥には強いのですが、その反面、過度な湿気に弱いという弱点があり、水はけが悪い土壌で育てると梅雨の時期に長雨が続いたときなどに土壌に浸透した雨水の影響で根腐れを引き起こしやすいので、水はけの悪い粘土質の土壌を避けて育てましょう。
花壇をつくれる場所に水はけが悪いところしかなかった場合には、土壌改良材を使用するなどして水はけをよくするという方法もあります。また、花壇や菜園に直接植える方法のほかにも、深めの植木鉢に生育に適した環境を人工的につくって育てられるので、ベランダやバルコニーで栽培することも可能です。
種付けや水やり、肥料について
エキノプスは種から育てることもできますが花が咲くまで1年以上かかるので、通常は苗を購入して植えるのが一般的です。苗の植え付けは春または秋が適しているので、花壇に直接植え付ける場合には、この時期に向けて花壇の土作りをしておきます。
高湿度に弱いこの植物は水はけのよい土壌のほうが育ちやすいので、土壌に軽石や腐葉土を混ぜておき、大きな土の粒が残らないように深く丁寧に耕しましょう。ただし、粘土質の土が多い水はけの悪い土壌は簡単には改善されないので、
パーライトやバーミキュライトなどの土壌改良材や堆肥を混ぜて本格的な土壌改良が必要な場合もあります。花壇に苗を植え付けるときには、株と株の間を30~40cm程度の開けておくと、お互いの成長を邪魔せずに生育できます。エキノプスは鉢植えにも育てることができますが、
この場合には6号くらいの長い植木鉢を用意し、赤玉土と腐葉土を7:3の割合で混ぜたものに苦土石灰を混ぜて弱アルカリ性の状態にした土を植木鉢に入れ、苗を植え付けます。
この植物は乾燥に強く多湿に弱いので、水やりは土が乾いてきたら
水を与える程度でとどめるようにし、頻繁に水をやる必要はありません。水をやりすぎると根腐れを起こして枯れてしまう場合があるので注意しましょう。なお、養分が少ない痩せた土壌でも元気に育つエキノプスは、基本的に肥料がなくても栽培可能ですが、
成長を促進させたいときには肥料を撒いても構いません。粒状の緩効性肥料を利用すると徐々に効果があらわれて長時間効果が持続しやすいので、早春と秋に株の周りに撒いておきます。また、鉢植えの場合には4~5月に液体肥料などを与えるとよいでしょう。
増やし方や害虫について
エキノプスは花が咲き終わった後にできる種を撒いて増やすことができますが、一般に花が咲くまで1年以上かかり、うまく発芽せずに花が咲くところまでいかないことも多いので、現在咲いている花を株分けして増やすほうが確実です。種まきや株分け・植え付けは、春(3~5月ごろ)か秋(9月~11月ごろ)に行ないます。
株分けでは株を根っこをできるだけ傷つけないように掘り上げ、1つの株を2~3つくらいに分けた後に水はけのよい土壌に植え付けます。ただし、この植物は多年草なので、無理に増やさなくても丁寧な育て方をしていれば寒冷地でないかぎりそのまま植えたままで毎年花を咲かせることができます。
具体的には、花が咲き終わった後の花がら摘みや葉が増えすぎた場合の葉刈り、春・秋の時期の肥料やりなどを行ない、越冬して次の年に花を咲かせるための養分を十分に蓄えられるようにすることが大切ですが、特に気をつけたいのが病気や害虫の被害です。
エキノプスは、葉にできた白い斑点が次第に広がって光合成を阻害する「うどんこ病」と呼ばれる病気になりやすいといわれていますが、葉にできる白い斑点はカビの菌が繁殖したものです。梅雨の時期で長雨が続いた後などにはカビの菌が繁殖しやすい時期になりますが、
予防のためには風通しのよい場所に株と株の間隔を十分にとって植えることが大切です。うどんこ病の兆候を見つけた場合には、カビの菌が全体に広がる前に木酢液や重曹を薄めた液体をスプレーするのも有効ですが、
白い菌が広範囲に広がっているときには市販の園芸用の殺菌剤をできるだけ早めに使用して対処しましょう。また、エキノプスは茎を食べるフキノメイガや茎・葉から養分を吸うアブラムシがつきやすいので、オルトランなどの浸透移行性の薬剤を使用して防除することをお勧めします。
エキノプスの歴史
エキノプスはキク科ヒゴタイ属の多年草植物の総称で、この名前の由来はギリシア語で「ハリネズミ」を意味する「エキノス」と「~に似ている」を意味する「オプス」が結びついた造語です。園芸種としても数多く流通しているエキノプスですが、
原種となっているのが「ルリタマアザミ」という和名を持つ品種で、ルリタマアザミはヨーロッパ中南部・地中海沿岸地域や西アジアの原産とされています。ルリタマアザミは昭和初期ごろには日本に渡ってきていましたが、本格的に日本の市場に流通し始めたのは戦後になってからです。
戦後、高度成長期を経て次第に豊かになっていく日本では、華やかで可愛らしい花をさした花瓶をお部屋のインテリアとして飾る家庭が増え、瑠璃色の鞠のような可愛らしいルリタマアザミの花が求められるようになったのでしょう。
現在でもルリタマアザミや園芸用に品種改良されたエキノプスの仲間は、プレゼントやフラワーアレンジメント、生け花など様々な用途で市販されており、数多くの日本人に愛されています。ちなみに、日本ではエキノプスの一種であるヒゴタイが古くから自生しており、こちらは中国や朝鮮が原産国とされています。
以前は愛知県や岐阜県、広島県、九州地方などの西日本に広く分布していましたが、現在では生息地の環境の変化などの影響で絶滅の危機に瀕しており、絶滅が危惧される植物として環境省のレッドリストやレッドデータブックに掲載されるなど、保護対象となっています。
なお、現在でもヒゴタイは熊本県の阿蘇地方で見ることができ、熊本県産山村のヒゴタイ公園では最盛期には約5万本のヒゴタイが咲き誇り、毎年8月から9月中旬ごろまで多くの人々の目を楽しませています。
エキノプスの特徴
エキノプスは、細長い茎の上に咲く球型の花が印象的なキク科ヒゴタイ属の多年草で、球型の花は数多くの小さな花で構成されています。品種によりますが、一般にエキノプスの花は4~5cmほどにまで大きくなり、細長い茎は60~150cm程度にまで伸び、
枝分かれした細かい茎の上にやがて淡い青や青紫色の鮮やかな花が咲きます。球型の花は開花する前の蕾の状態ではクリのイガや丸まったハリネズミのように見えますが、球の上のほうから小さな花が徐々に開花していき、やがて愛らしい鞠のような花となります。
葉にはアザミのように刺がありますが、手に刺さるほと鋭利なものではありません。開花時期は主に6月~8月の夏の暑い時期ですが、10月、11月の晩秋に開花時期を迎える品種も存在します。エキノプスはルリタマアザミの他にも120種類以上の品種が存在しており、
日本でも、園芸用品種として人気が高いヴィーチズ・ブルーや秋に開花する中型種のエキノプス・フミリス、銀白色の蕾が印象的なプラチナム・ブルーなど、多種多様な品種を栽培することができます。エキノプスはしっかりと手入れをすれば
毎年花を咲かせる多年草・宿根草という種類なので、家庭菜園で切り花用として育てるだけでなく、花壇を彩るガーデニング用の植物としても適しています。ガーデニングで育てる場合には、開花する時期の異なる複数の品種を植えておくことで、
初夏~晩秋までの長い期間エキノプスの可憐な花が咲かせることができます。ちなみに、この植物は水分の少ない花なので、風通しの良いところに吊るして乾燥させるだけで簡単にドライフラワーがつくることができるという魅力もあります。
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