ハナズオウの育て方
育てる環境について
ハナズオウは頑健で、放っておいても伸びていくため、育て方で難しい点は特にありません。植える環境としては、日当たりの良い場所を選ぶのが第一条件です。日陰でも育つことは育ちますが、日照時間が不足すると花の数が少なくなり、また枝もひょろ長くなってしまいます。
日当たりさえ確保しておけば、暑さや寒さはそれほど考慮しなくても良いでしょう。マメ科の植物は自分で肥料を合成できるため、肥沃な土地でなくても育ちます。どちらかといえば痩せた土地のほうが向いているかもしれません。ただし土壌は水はけの良いところが適しています。
粘土質の土地に植えるなら、あらかじめ土に川砂や赤玉土をたっぷりと混ぜ、水はけをよくすることが大切です。そうしないと根が腐ってしまい、枯れることもあります。湿気が多く、地面を少し掘っただけで水が浮いてくるような場所には不向きです。
ハナズオウは寒い地域が原産ですから、もともと強い耐寒性があります。また冬には葉を落としてしまうため、人間が特に寒さ対策をしてやる必要はありません。さらに夏の暑さにもよく耐えます。直射日光も平気なので、まずは日当たりを優先してください。
ただし斑入りの葉を楽しむタイプの園芸品種は、日光による葉焼けを多少考えなければなりません。ハナズオウは庭植えにするのが一般的ですが、鉢で育てることも可能です。その際は大きくなる前の苗木の時期から、こまめに剪定して小さく収める工夫が必要です。
種付けや水やり、肥料について
ハナズオウの植え付けは落葉している時期に行ないます。葉が出ている時期は避けてください。具体的には11月~12月、または2月~3月が適しています。寒すぎる時期も良くありません。日当たりと水はけを考えて場所を決め、苗を植えます。大きな株を移植するのは、やや大変な作業になります。
小さな苗なら簡単ですが、花を咲かせるのに3年以上かかることもあります。植え付ける株を選ぶときは、幹の数よりも太さを重視します。小さな幹がたくさん生えている株は、生育が悪くなる傾向があります。勢いのある太い幹が、2~3本だけ生えている株を選びましょう。
植え付けの直後は水をたっぷりと与えます。しかしそれ以外は、よほど地面が乾燥したときを除いて、水やりの必要はありません。基本的に雨水だけで十分です。マメ科植物の根には根粒菌というバクテリアが住みついていて、植物と共生関係にあります。
この菌は空気中の窒素を取り込んで化合物とし、植物に供給します。そのためハナズオウは、窒素肥料を与えなくても生育できるという特徴があります。ただし花つきを良くするために、窒素以外の肥料を与えることは有効です。施肥するなら毎年2月ごろ、
油粕と骨粉を等量混ぜて根元に与えます。これに加えて、同じものを8月に与えても構いません。しかし元来、ハナズオウは肥料がなくても平気な植物です。生育を心配して肥料を与えすぎると、逆に花つきが悪くなるため、量は控えめにするのがコツです。
増やし方や害虫について
ハナズオウは種から簡単に栽培できます。晩秋になったら黒褐色に熟した鞘を収穫し、中から種を取り出します。採取した種は、すぐに蒔くこともできますが、翌春の3~5月ごろに蒔いても構いません。その際には通気性のある袋に入れ、湿気のない冷暗所で保管します。
種は硬い皮に包まれているので、熱い湯につけてしばらく放置し、軟らかくしてから蒔くと発芽しやすくなります。ハナズオウは自然に樹形をつくりますが、細い枝が多数出てきて見苦しくなることもあるため、不要な枝は剪定します。まず根元から分かれて出るひこばえは、
丈夫なものを2~3本だけ残し、あとはできるだけ早めに切ってしまいます。これを怠ると枝が込み合い、生育にも良い影響を与えません。夏から秋にかけては、伸びすぎた枝の先を軽く剪定して、長さを整えます。若い木は成長が早いので、多めに切り取っても構いませんが、
年をとった木は控えめにしたほうが良いでしょう。葉が落ちた後は、不要な枝を根元から整理します。このとき花芽のついた枝を切らないようにしましょう。花芽は若い木では短い枝につきますが、成熟した木では長い枝にもつくようになります。
だいたい10月以降になれば、花芽をはっきりと確認できるので安心です。ハナズオウは病気や害虫には強いとされています。しかしイラガやアメリカシロヒトリなどが発生し、葉が食害を受ける場合があります。よく注意して、発見したら直ちに駆除してください。
ハナズオウの歴史
ハナズオウはジャケツイバラ科ハナズオウ属に分類される落葉低木です。ジャケツイバラ科はマメ科に似ているため、マメ科ジャケツイバラ亜科とする場合もあります。原産は中国で、主に中国から朝鮮半島の、比較的寒冷で痩せた土地を生息地としています。
日本に渡来した時期は江戸時代の初期と考えられており、元禄時代の園芸家伊藤三之丞(伊兵衛)が著した「花壇地錦抄」には、その名が既に記されています。学名はCercis chinensisといいます。Cercisは小刀の鞘のことで、豆の鞘の形から命名されました。chinensisは「中国の」という意味です。
和名のハナズオウは、花の色が蘇芳色に似ていることに由来します。蘇芳はマレー語のサパンが転訛したもので、古代から赤い染料として使われてきました。蘇芳を採る原料のスオウは、ハナズオウとは別のマメ科の植物で、日本には奈良時代に渡来したとされています。
蘇芳はスオウの木を煮出して採取されます。ほかにスオウバナ、スオウギという別名もあります。英語ではチャイニーズ・レッドバッド、またユダ・ツリーとも呼ばれます。これはイエス・キリストを裏切った13番目の使途イスカリオテのユダが、
この木で首を吊って自殺したという伝説に基づいています。春に花を咲かせるため、俳句では春の季語とされています。また花言葉は「高貴」「豊かな生涯」などですが、ユダの伝説にちなんで「裏切り」「疑惑」というのもあります。
ハナズオウの特徴
ハナズオウは古くから庭に植えられてきた落葉低木です。日本では高さ2~5m程度ですが、原産地の中国では10mを超える場合もあると言われています。開花時期は春です。前年までに伸びた古い枝に花芽をつけます。そして4月から5月ごろにかけて、葉を出す前に花を咲かせます。
長さ1cmほどで、蝶の形に似た赤紫色の花が、枝の節の部分にびっしりと固まって咲きます。花茎がほとんどないので、無骨な枝が花に直接覆われているように見えます。葉はマメ科らしくないハート型の単葉で、葉柄は長く、掌型の葉脈があります。
大きさは5~10cm程度で、表面に光沢があり、互生しています。花の後には長さ数cm、幅1~1.5cmの豆果をつけます。えんどう豆に似ていますが表面に毛はなく、中に5個ほどの種が入っています。はじめは緑色ですが、秋になって熟すると濃い褐色に変化します。
葉が落ちた後も、豆果は木にくっついたまま落ちにくいのが特徴です。枝はホウキを立てた形に広がります。樹皮はおおむね灰色で、紫草皮という漢方薬に使用されます。ハナズオウの仲間は、アジアや北アメリカの温帯地方に数種類が分布しています。
アメリカハナズオウは葉が赤くなるという特色があり、淡紅色の花を咲かせます。ヨーロッパの地中海沿岸には、ピンクの花が咲くセイヨウズオウがあります。そのほか園芸品種としてシロバナハナズオウがあり、通常とは異なる白い花を楽しむことができます。
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