パフィオペディラムの育て方
育てる環境について
生息地が熱帯、亜熱帯なので、栽培する際には温度が重要となってきます。適温は15~30度です。自生する状況でも、湿度が高く水はけが良いところに生えることが多く、比較的涼しい場所を好みます。最高温度だと25~35度、最低気温7~20度くらいですが、日本だと夏は暑過ぎて冬は寒過ぎてしまいます。
パフィオペディラムはランの中でも多少は低温に強く、5度程度の温度で冬越しが可能と言われていますが、10℃以上の気温を保つほうが無難ではあります。外気温15度を目安にして、それ以上なら外で、それ以下なら室内で管理するのが良いでしょう。
また、夏の高温にもしっかりと対策を行う必要があります。30度以上になると生育が悪くなります。40度を超えると葉やけを起こして枯れやすくなるので注意が必要です。室内でも、日当たりの良い場所などは30度以上になることがあるので、その点にも注意してください。
強光線に弱い種なので遮光を行うようにしましょう。夏は遮光率70%、春と秋は遮光率30%くらいの環境がむいています。レースのカーテン1枚が遮光率30%くらいなので、それを目安にしてください。遮光している場合でも、葉の表面温度が高くなると葉やけを起こすことがあるので、
風が通るような場所に置くか、サーキュレーターなどで風を送るなどして、風通しに気を付けてください。温度管理にはなかなか気を使いますが、温度さえしっかり押さえておけば年中育ってくれます。
種付けや水やり、肥料について
ランの膨らんでいる茎の事をバルブと呼びます。成長するための栄養分や水分が蓄えられる場所なのですが、パフィオペディラムにはそのバルブがありません。水分が蓄えられることがないので、植え込み材料の表面が乾いたららっぷりと水をあげましょう。
乾きに弱い植物なので、こまめに水を与えてください。1回の水やりの目安としては、鉢の大きさと同じくらいの量をゆっくりと与えます。夏は特にしっかり水を与えます。気温が下がってきたら、水の量は減らしましょう。秋頃、葉の基部に水が溜まってしまうと、
仲のつぼみが腐りやすくなってしまうので、水がはねないように静かに水やりすることを心掛けてください。通気性が悪いと根に良くないので、水はけにも気を付けて、受け皿に水を溜め過ぎないようにしてください。根が腐ってしまう可能性があります。
用土は水ゴケやバークチップ、軽石などが向いています。軽石は大粒は乾きやすく、小粒は乾きにくいので、混合量によって水もちを調整できます。肥料はあまり与えなくても大丈夫です。与える場合は液体肥料を1000~3000倍程度に薄めて2週間に1度くらいが目安です。
それに加えて、5月中旬に固形肥料を1回与えてもよいでしょう。その時は、元気に根が伸びていることを確認してから行ってください。夏の高温期や冬場に温度を保てない場合は与えない方が無難です。肥料を与え過ぎるとかえって良くないので、普通の植物に与える肥料よりも倍以上の薄さにするように気を付けてください。
増やし方や害虫について
1~2年に1度の割合くらいで、花が咲いた後に植え替えを行います。植え替えに最適な時期は、最低気温が15度以上になる4月上旬です。新芽が出てしばらく経ってから新根が出てきます。この、新芽だけが出ている状態のときが、植え替えのタイミングとしてはベストです。
根痛みがないのでスムーズに育ってくれます。開花中の株は、花が終わるまで待ちましょう。この植え替えの際に、株分けを行い増やします。あまり小さく分けないように注意して、2~3芽を1株として植えます。パフィオペディラムには軟腐病やハダニの被害がよく見られます。
1番多いのが軟腐病で、株元や葉が茶色くなり水気を帯びた状態になります。発生すると1日2日で悪化するなど進行が早く、そのままにしておくと枯れてしまいます。早めに殺菌剤の散布を行ってください。軟腐病は植物の傷口から侵入します。葉をかじる害虫の駆除や予防、
花を切る際にも乾燥した天気の良い日を選んで傷口がすぐに乾くようにするなど、日頃から気をつけましょう。また、軟腐病菌は普段は雑草の根の周りにいることが多いので、除草を行い雑草を生やさないようにすることも大切です。ダニやカイガラムシを見つけた場合は、殺虫剤を散布します。
また、外に出す際に虫がつくことが多くあります。ダニやカイガラムシの他、ナメクジや新芽の時期である春さきはアブラムシがつくことがあります。病気につながる可能性もあるので、害虫はしっかり駆除しましょう。
パフィオペディラムの歴史
パフィオペディラムはランの仲間です。熱帯から亜熱帯アジアに約70種が分布しており、東南アジアから中国南部、インド、インドネシアの密林などアジアの広範囲に渡って自生しています。原産地はベトナムの中部です。ただし、ひとつひとつの種の分布範囲は狭いものが多く、
野生での絶滅が危惧される種も多く存在しています。園芸的に人気があり、特徴的な花に加えて育て方がそう難しくないことから、パフィオペディラム・インシグネという種は1819年に発見されてすぐにイギリスに持ちこまれました。翌年にはすぐ開花したそうです。
花色は地味だが味わい深い、気品の高い美しさなどと、高く評価されています。ランと言えば洋ランのイメージが強いのですが、日本での栽培の歴史も浅くはありません。有名なところでは、水戸徳川家第十四代当主・故徳川圀斉氏秘蔵の蘭コレクションにもパフィオペディラムが含まれています。
コレクションは現在でも水戸市植物園などで栽培が続いており、展示されたパフィオペディラムを見ることができます。古くから様々な交配品種が作られており、野生の優良個体は交配用として高額で取引されているようです。
現在ではワシントン条約によって国際取引が厳しく規制されており、1990年1月18日には、輸出入に許可が必要という分類から輸出入は原則禁止とするI類に格上げされました。多くの交配品種がある傍らで、今でも多くの原種がそのままに栽培されています。
パフィオペディラムの特徴
パフィオペディラムはランの一種ですが、よく見かける胡蝶蘭やカトレアなどと違って花びらの一部が袋状になっています。袋状になった唇弁は「リップ」とも呼ばれます。特徴的な袋状の花弁の形状が食虫植物をイメージされることが多いのですが、虫を取ることはありません。
花の色は白っぽく、膨らんだ唇弁はピンクを帯びてきます。その他にも、全体的に丸っこく可愛らしいものや、黄色地に赤紫色の細かい斑点、黄色地に褐色の斑点、深い紅紫のものなど、種類によって様々な色の花が見られます。赤紫に近い赤系、黄色、緑、褐色など、
どちらかというと落ち着いた色彩、斑点などの模様の入り方も多岐に渡り、一言では言い表せないような複雑な花が多いのも特徴です。存在感と個性がある品種といえるでしょう。花色を含め、特徴的なリップなど、胡蝶蘭のような華やかで美しいイメージよりも、
どちらかといえば渋めの雰囲気がある花です。数多くある洋欄の中でも、四大洋ランと称されていて、園芸種としても人気を集めています。多くの交配種がありますが、直立する花茎にひとつの丸形の花を冬咲かせるタイプは整形花と呼ばれています。花弁に光沢があるのが特徴です。
多花性と呼ばれるタイプは、春から夏に花茎に複数の花をつけます。これらは、大きく迫力もあり魅力的です。葉は楕円形、もしくは細長い姿です。葉の色は基本的には緑色ですが、紫色や緑白色の斑点が入るものもあります。草丈は、10cmほどから、大きいものになると1mにもなる大型種もあります。
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