スイセンの育て方
スイセンの育て方、植え付けや種付け
スイセンは、主に球根を分球させることによる種付け(繁殖)がメインの植物です。ヒヤシンスなどの球根植物同様、花が咲き、実がなり、種が出来ることはありますが、球根による栽培がメインです。また、実の膨らみはあっても種が出来ない品種もあります。ですからスイセンの繁殖に関しては、種付けという表現は、適していないかもしれませんね。
スイセンは、秋(10月ごろ)に球根を植えると、翌年の冬から春先にかけて、花を咲かせます。これは、地方の気候によって多少変わってきますが、1月~2月が、だいたい花の見ごろといわれます。しかし、早いものは12月には咲きますし、遅いものでは3月に開花を迎えるものもあります。
球根の植え付けにあたって、おさえておきたいポイントは「霜が降りる前に」ということです。霜が降りる前に、根をある程度張らせてあげておくと、生育が良くなるので、気候を見ながら、植え付けの時期を早めることも必要です。
小さな鉢で栽培する場合、ギリギリ球根の上部が土から顔を出すくらいの深さで植えます。大きな鉢で栽培するなら、土の表面と球根上部の間が、球根1個分の深さになるくらいが目安です。地植えでの栽培ならば、この深さが球根2個分、といったところです。以上が、植え付けや種付けのポイントです。
スイセンの育て方、水やりや肥料の管理
では、植え付け後の手入れについて詳しく知っていきましょう。植え付けから、根が張るまでの間は、しっかり水をやります。これはひと月から3ケ月が目安です。土の表面が乾いたら、たっぷり水をあげてください。特に鉢植えは水やりが重要です。地植えの場合はあまり神経質にならなくてもよいかもしれません。最初のひと月が終わったら、土がかなり乾燥したのを見計らって水をやる、という程度でよいこともあります。
寒い時期の水やりは、土の中の水分が凍って、霜柱ができるのを防ぐため、午前中に行います。夕方以降に水やりをするのは、良くありません。花の時期が終わり、葉が黄色く枯れたら、水やりはストップして構いません。この時期は休眠期ですので、あまり水は必要ないのです。
肥料に関しては、まず植え付けの際に、土のリン酸分を補ってやるとよいでしょう。これは、市販の草花用の培養土を使うと簡単ですね。バランス良く肥料がブレンドされています。窒素分が多すぎると、花の付きが悪くなるといいます。あるいは、植え付け後のひと月の間、液肥などを一週間に一度程、与えるという方法もあります。
花が咲き終わってから、少量の液肥か粒状の肥料をあげるケースもあります。いわゆるお礼肥えというものです。基本的にスイセンは多くの肥料を必要としないので、これは必ずというわけではありません。植物の様子や土の様子、気候など、様々な面から判断して決めることが大切ですが、この判断が容易に出来るのは、ある意味プロと呼べる人たちでしょう。
スイセンの育て方、その他注意点について
そもそも、スイセンとは、どのような土壌が適しているのでしょう。地中海沿岸などを原産とする球根植物の多くがそうであるように、水はけの良い土壌が適しています。日本のスイセンの自生地を思い浮かべてみてください。海岸線の斜面になった場所に群生していることが多いですね。こうした斜面は水はけが良く、風通しもよい場所と言えますね。
そして、日当たりの良い場所が大好きです。日当たりが悪いと、花のつきが悪くなるといわれます。また、花の後も、葉が日差しを浴びて球根が養分を蓄えますので、日当たりの良さは重要なポイントです。しかし、暑さは苦手ですので、夏場は涼しさも求められます。地方によっては、日本の夏はスイセンにとっては少しツラいものかもしれませんね。
その他の注意点としては、花の後に、花茎を切ってあげることがまず挙げられます。葉は切ってしまわないように注意します。先にも述べたように、葉が日差しを浴び、球根が栄養を貯めこみ、太ってくれるのです。葉は7月上旬までには自然に枯れてしまうでしょう。
球根の掘り上げについては、やはり数年に一度は必要になってきます。土の中で、球根が太り、母球にくっつくようにして子球ができますが、長く放っておくと混み合ってきますので、掘り上げて、分球します。手で分割してあげて構いません。球根が休眠期に入ったら掘り上げのタイミングですね。
大きな球根は翌年に花を咲かせることができるでしょう。小さいものは、花が咲くまで時間がかかることがあります。最後に病害虫についての注意点を挙げておきます。アブラムシが媒介することで、ウイルスによる病気が発生することがあります。これは、モザイク病という病気で、葉に黄色い筋状の斑が入ったりします。
特効薬のようなものはないので、アブラムシの駆除が基本的な対策になります。これらの育て方をふまえて、毎年春に可憐な花々を観賞したいものです。花だけでなく、スイセンは香りも楽しめる植物です。春を告げる花には実に相応しいことですね。
スイセンの歴史
スイセン、漢字で書くと水仙。この植物は、ヒガンバナ科(旧分類だとユリ科)スイセン属の多年草です。地中海沿岸やスペイン、ポルトガルなどを原産とし、世界中に分布してきました。日本にも、中国を経由して渡ってきたといわれています。日本で有名な生息地は、千葉県の鋸南町や、福井県の越前海岸、静岡県の爪木崎など、多数あります。
こうした場所では、毎年1月~2月にかけて、美しいスイセンの群生を見ることが出来ます。スイセンは、古代ギリシャの壁画にも描かれています。紀元前3500年頃から1500年頃まで栄えたとされるミノア文明において、クノッソス宮殿が建設されましたが、この宮殿の玉座の間に描かれているのです。
また、ギリシャといえばギリシャ神話ですが、この神話に登場する美少年ナルキッソスの物語は、この花の由来になっています。自らの美貌を何よりも愛したナルキッソスは、袖にしたニンフから恨まれ、復讐の女神によって水面に映った自分に恋するように仕向けられてしまいます。しかしその恋は実るわけがなく、彼は憔悴して死んでしまうのでした。
彼の身体はそのまま花の姿に変えられました。水辺で水面をのぞき込むようにして咲くスイセンの誕生です。Narcissus(ナーシサス、ナルシサス)は、スイセンの学名です。同時に、ナルシスト(ナルシシズム)という自己愛性を表す言葉の語源でもありますね。
スイセンの特徴
この植物の特徴として挙げられるのは、やはり球根植物であるということでしょう。秋植え・春咲きの球根植物の部類に入るでしょう。基本的には、冬から春にかけて、白や黄色の花を咲かせることが多く、春告げ草として知られます。また、その花の形状も特徴的です。ニホンズイセンを例に挙げてみましょう。
白い花びらの中心部に、黄色いカップ状の部分がありますね。これは副花冠(ふくかかん)と呼ばれるものです。花びらも、花弁と萼(がく)が組み合わさっており、この二つを合わせて花被片と呼ぶのです。こうした花被片や副花冠の、色や形状の違いによって、品種を区分するのです。
そして、有毒植物としても知られています。葉や茎など、全草に毒がありますが、球根部は特に毒性が強いとされています。うっかり食べてしまうと、食中毒や皮膚炎を起こしてしまうので、注意が必要です。また、アレルギー性の皮膚炎を起こすことも稀にあります。この花を飾っているだけで、過敏な方は、かぶれなどの皮膚症状が出ることがあります。
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