ネムノキの育て方
ネムノキの育てる環境について
ネムノキは自制力が強いことから、育て方はそれほど難しくはありません。基本的には日光がよく当たるところに植えたほうが、花が多く咲きますので、日なたや明るい日陰地など、好きな場所に植えるようにしましょう。他の樹木が密集していて常に日陰になるような場所や、
建物の影などで日当たりが悪い場所に植えると、ある程度成長はしますが花付きが悪くなります。また、乾燥しすぎても成長を阻害されますので、乾燥する場合には株元を敷きワラなどで覆って保湿するとよいでしょう。逆に、日光のよく当たるところで生育したものは、花が多く咲きます。
用土に関しては、湿潤で肥えた土壌を好みますが、水はけのよい場所であれば基本的に土質を特に選ぶことがありませんので、庭植えをするときにも場所が選びやすくなります。自分で用土を配合する場合には、赤玉土の中粒2に対して、
完熟腐葉土または樹皮堆肥を1の比率で混ぜたものなどを使います。ネムノキは、根が傷ついてしまうと根付かなくなってしまいますので、一度庭植えをした樹木を移動させたり植え替えすることはほとんどありません。最初に種まきや栽培をするとき、
ある程度成長しても日陰になったり周辺の建物や植物などに影響を与えないか、スペースが十分にあるのかなど成長したときのことも考えて場所選びをしましょう。また、細かい枝が多く絡み合っているところなどは剪定が必要ですが、芽吹きにくいためできるだけ枝は残しましょう。
ネムノキの種付けや水やり、肥料について
ネムノキの植え付けは、暖かくなって芽が出てくる3月中旬から4月中旬頃です。落葉樹の中では比較的遅いほうですが、一度地植えしたら移植することが困難ですので、時間をかけてゆっくり考えましょう。なお、保存しておいた種子を種まきする場合には、3月中旬から下旬までに行いましょう。
丁寧にまかなくても野生種は高確率で自生していますので、まく位置だけに気を付けておきましょう。この種類の樹木は水はけのよい土地を好みますが、鉢植えでも庭植えでも、植え付けてから2年未満の株は土の表面が乾いたら、特に普段より気持ち多めにたっぷり水やりをします。
逆に、庭植えで植え付けから2年以上経過した株は、雨などで十分な水分を吸収しますので、日照りが続かない限りは特に水やりをする必要はありません。肥料は庭植えの場合には1月ごろに寒肥として有機質肥料を株元の周辺に埋めておきます。
また、鉢植えの場合には、3月に化成肥料を株元に追肥します。この樹木はある程度肥沃な土壌を好みますが、繁殖力の強さからもわかるとおり、栄養が少ない土壌でも問題なく成長します。逆に、窒素分の肥料は枝葉が茂りすぎ、
そちらに栄養素を持っていかれて花付きが悪くなりますので、できるだけ避けましょう。種まきからスタートした場合には、開花までに数年が必要になりますので、その間に枝葉が成長しすぎないように、使用する肥料のバランスには気を付けておくことをおすすめします。
ネムノキの増やし方や害虫について
ネムノキの増やし方は大きく分けて2つあり、4月に根を掘り、長さ10~20㎝程度に切り取って植えつける根伏せ・根ざしと、秋に熟したさやから採取した種を保存し、翌年3月中旬~下旬にまく方法があります。根伏せを行う場合には、接ぎ木株の場合には性質が異なる気を増やすことになりますので、注意しておきましょう。
種まきの場合には、時期が来たら種をまき、2~3㎜程度土をかければ大丈夫です。光を好む植物ですので、あまり深くに植えないようにしましょう。ネムノキで気を付けるべき病気は、すす病などが代表的です。これはカイガラムシの排せつ物が、葉や枝に堆積するに従い、
黒いすす状のカビが発生して光合成を妨げるというものです。見た目だけでなく、光合成による栄養の供給が制限されますので、樹木が弱ってしまいます。カイガラムシを防除することで発生がなくなります。また、カイガラムシは数種類おり、樹液を吸うために様々な季節に発生します。
幹に傷をつけずにかき落としたり、薬剤の散布をしたり、枝を間引くなどの対策をとりましょう。ちなみに、このカイガラムシは主に6月中旬から7月にかけて幼虫が発生し、この段階で放置しておくと繁殖した害虫がほかの場所に移動するため、
被害がさらに広がります。幼虫のうちに駆除をしたいときには、しばらくすると幼虫の体がロウ質に覆われて薬剤が効きにくくなりますので、タイミングを見逃さずに駆除しておきましょう。
ネムノキの歴史
ネムノキは原産地が広く、日本や朝鮮半島、中国、台湾、ヒマラヤ、インドなどが代表的なものとなっています。このほかにもイランやアフガニスタン、などの幅広い地域を生息地としており、幅広く自生しています。日本でも古くから親しまれており、
国内最古の歌集である万葉集には、合歓木と書いてねぶと詠む和歌が多数見つかっています。和名のネム、ネブという名前は、夜になると葉が閉じることから来ています。一方、漢字の合歓は中国において、ネムノキが夫婦円満の象徴とされていることから付けられたものであり、
こちらでも古くから親しまれてきた樹木であることがわかります。ネムノキは昔から薬としても用いられており、中国医学では、ネムの花を生薬として用いていますし、夏から秋に樹皮や葉を採取して日干しにして乾燥させたものを合歓、あるいは合歓皮と呼び、用いられてきました。
利尿作用や滋養強壮、鎮痛、精神安定など様々な症状に用いられており、煎じて患部に塗ったり布袋に入れて煮だしてから風呂に入れるなど、使い方も様々です。日本では文学でも目にすることが多く、貝原益軒もこの植物の薬効を認めた文章を記しています。
また、海外にも広く生息しており、やはり薬として使用されていました。英語では多数の雄しべを絹に見立て、シルク・ツリーと呼んでいます。現在では害虫駆除の効果があり、生命力が強いことから街路樹としてもあちこちで利用されており、観賞されています。
ネムノキの特徴
ネムノキは独特の特徴をいくつか持っています。たとえば、花は夕方に咲き、その時間には葉を閉じて眠りにつきます。夜明けとともに葉が開き、花がしぼみますので、花を見る機会はそれほど多くはありません。また、生命力が強いのも大きな特徴となっており、
多くの場合荒れ地に最初に侵入する樹木ですが、芽吹くのが遅医一方で成長が非常に早くなっています。成長力の強さの一端として耐寒性が強いことが挙げられ、ネムノキ属が主に熱帯に生息しているのに対し、この木は温帯で広く栽培され、野生化もしています。
この樹木は皮が滑らかで灰褐色をしており、枝が上部で横に伸びます。樹高は8m近くある落葉高木で、夏場には心地よい木陰を作ってくれます。花は6~7月が開花時期となっており、枝の先に長い雄しべを持つ、淡いピンク色の糸状の花弁が無数に集まった美しい花を見せます。
中央部分は黄色がかった色合いですが、花弁の先端は淡紅色になっており、葉が閉じることで華やかさが増して、昼間とは全く異なる外観になります。ネムノキの花は派手さのあるものではありませんが、繊細なピンク色の花が無数に集まっている様子が非常に美しく、
かわいらしい印象となっています。また、果実は秋ごろに平たい楕円形の豆果ができます。ネムノキは比較的大きめの茶色っぽいさやの中に複数の豆が入っており、これを種まきすることによってさらに広範囲に増えていくといった仕組みになっています。
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