月下美人の育て方
月下美人の育てる環境について
月下美人の育て方には、いくつかのポイントがあります。5月~9月の生育期は野外に置きます。日光を好むので日当たりのよい所に置くのがよいでしょう。日光が不足すると生育が不十分になり、花もつきにくくなるので気をつけましょう。
ただし、夏の直射日光に長く当てると葉が焼けて黄色くなってしまうので、真夏は直射日光を避け明るい日陰に置くのが安全です。多湿には弱いので、長雨には当てないようにします。メキシコを生息地とするだけあり寒さに弱く、5度以下の低温では凍傷を起こし葉が痛んでしまいます。
冬を越すには8度から10度くらいあると安全です。およそ2度くらいで凍死します。やさしい日差しが差し込むできるだけ明るい場所で、7度以上の気温を保てる場所で管理します。冬を越えた後、葉が青々としていれば問題ありませんが、葉や茎が褐色になっていたら、水の与えすぎによる根腐れを起こしているかもしれません。
その場合、植え替えをしたほうが安全です。もし、全体的に茶色くなった葉があれば、根元から切り取ります。元気な葉は切り取らないように気をつけましょう。「シュート」と呼ばれる棒状の茎が伸びますが、放っておくとどんどん伸びるので、先端を指で摘みます。
生長するのは先端のわずかな部分なので、つま先で切り取るようにします。高さが不揃いになると姿が悪くなるので、同じくらいの長さにそろえるようにします。シュートは付け根から切り落としてしまうと、芽を出す力が弱まってしまうので、先端のみ切ります。黄ばんでしまった葉は、枯れる前に切り取るようにします。
月下美人の種付けや水やり、肥料について
サボテンの仲間ですが、水を好みます。生育期は土の表面が乾いてきたら水をたっぷりと与えます。冬は土が軽く湿る程度に月2~3回の水やりを行います。極端に乾燥してしまうと生育が悪くなるので注意が必要です。冬でも10度以上の環境であれば生長するのでごく控えめに水やりをします。
肥料は化成肥料を株元に月1回、2週に1回液体肥料を与えます。春から秋までは欠かさず続けます。9月に花が咲き終わった後、1週間程度水やりを中止します。霜の降りる前までは同じ場所に置きます。10月になったら翌年3月まで肥料を中止します。
冬期間の水やりはごく少量にします。鉢の土の表面が白く乾燥してから3日後くらいで良いです。3月、霜が降りない季節は明るい日陰、それ以外は室内に置きます。天気予報の最低気温はよくチェックしましょう。4月から梅雨明けまでは、日の当たる場所に置いておきます。
多少葉が日焼けする程度に日に当てると花がつきやすくなります。週に1度程度水やりをします。4月~9月までは肥料を月1回程度やります。7月~8月、開花が見込まれる株は、7月から肥料を中止し、水やりを減らします。梅雨明けから9月末頃まで直射日光のあたる場所は避けます。
土は水はけのよい土が適しています。植え替えは真夏を除く生育期に行います。鉢から抜いた株を土を軽く落として根を3分の1ほどにキリ、新しい土に植えます。あまり深く埋まらないよう、浅めに植えます。茎は斜め横に広がる性質があるので、支柱を立てて広がらないようにします。
月下美人の増やし方や害虫について
月下美人はさし木で増やすことができます。夏がもっとも適した時期です。葉を15センチ~30センチの長さにカットし、日陰で1週間ほど乾燥させます。葉をカットする際は、ナイフなどでスパッと切ります。はさみで切ると細胞がつぶれて根が出にくくなります。
また、切り口を充分に乾燥させないと腐りやすいので、気をつけましょう。乾いた赤玉土を入れた鉢にカットした葉を数枚束ねて浅めに挿します。風通しの良い明るい日陰に置き、1週間ほど経った頃から水やりを始めます。挿してから1ケ月ほどで根を張り始めます。
根がある程度の長さになったら、鉢に植え替えます。3年程度かかり、枝分かれして、長いシュートができた頃、花をつける株になります。害虫は、ハダニとアブラムシの被害が見られます。ハダニは葉について汁を吸います。古い歯ブラシなどで葉を傷つけないようにこすり落とします。
アブラムシは主につぼみにつきます。薬剤を使用して駆除しましょう。月下美人は、気温の管理と、日光の当てすぎ、水・肥料のやり過ぎに気をつければ生育は難しいものではありません。葉が多く育つが、つぼみがつかない、という場合、株が育ち、葉が茂って植物の姿が整っている状態であれば、
日光不足が原因となっていることが多いようです。なるべく日に当てるようにしましょう。ただし、真夏は強い日差しを避け、反日陰で管理するようにします。春から秋までは肥料を与え、冬は中止、寒さから守り乾燥気味にして7度以上の気温をキープします。以上のことに気をつければ神秘的な夜の女王を観察することができるでしょう。
月下美人の歴史
月下美人とは、メキシコを中心とした中南米を原産地とする多肉植物です。名前は、夜に咲き始めた美しい花が翌朝にはしぼんでしまうことに由来します。夜に開花する理由は、原産地のメキシコ熱帯雨林地帯において夜行性のコウモリを媒介として受粉できるように適応した結果と考えられています。
月下美人は、原産地のメキシコの熱帯雨林地帯から導入された株から挿し木や株分けで増やされたクローンです。人工授粉しても実がなることはありませんでしたが、1980年代に東京農大の研究グループが持ち帰った野生のクローンを増殖できたことにより、日本国内で普及しました。
月下美人はその美しさや芳香のため、神秘的な植物として好奇の目にさらされた時代が長くありました。そのため、様々な誤った俗説があります。一つの株から分かれたため同じ日に咲くという説があります。同じクローン株であっても、その株のおかれた環境によって開花が起こりますので、同じ日に咲くということはありえません。
また、1年に1度しか咲かないという説があります。正しく手入れをすると、年に2回以上咲きます。きちんと栄養が蓄えられて、花を咲かせるのに必要な体力を回復できるだけのゆとりが成長期に蓄積されているかをクリアできていれば年に2回以上の開花は可能です。
新月の夜にしか咲かないという説もあります。野生の月下美人はコウモリの受粉により増えますが、コウモリには月齢に合わせて花粉や蜜を食べる習性はありません。よって、月齢に合わせた開花サイクルもありません。
月下美人の特徴
月下美人は、サボテン科クジャクサボテン属の植物です。高さは2mに及び、濃厚な甘い香りの直径25cmの花を咲かせます。月下美人の一番の特徴は、花が咲く時間の短さでしょう。6月~11月の夕暮れから芳香を漂わせて咲き始め、深夜2時頃にはしぼみ始めます。
つぼみは開花直前になると、自然に下向きに膨らみ、夕方に芳香を漂わせ始めます。これは、コウモリが蜜と花粉を接触しやすいために進化したものと考えられています。甘く強い香りで、月下美人の開花は香りで気づくと言われています。昼間に花を咲かせることがないため、
園芸店で見ることはほとんどありません。よって、自分で栽培しないと、実物の花を観る機会はないといっていいでしょう。花が咲いているところを実際に観ると、写真や映像で見るものとは全く違った感動があります。こればかりは体験しないとわかりません。
一夜にして花の命を終え、しかも咲くのは夜のみ、という神秘的な植物です。花の色は透明感のある純白で食することもできます。咲いている花は焼酎につけて保存ができます。酢の物や天ぷら、台湾ではスープの具としても使われています。また、濃厚で甘い芳香を放つので、南フランスでは香水の原料として使われており、
石鹸の香りとしても好まれています。その気位の高い好奇な麗人のような花の姿や、一晩しか開花しない特徴から「儚い美」「儚い恋」「繊細」「つややかな美人」などの花言葉があります。英名はA Queen of the night と言います。妖艶で豪奢な花の姿は、夜の女王の名にふさわしいと言えるでしょう。
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