ネズミモチ(プリベット)の育て方
植え付け・育て方
東北より南であれば、十分植え付けは可能です。土地の気温差により、葉の落ち具合は異なり、暖かい土地ではあまり葉を落としません。一方、 東北などの気温が低く寒い土地では、冬に葉が全て落ちることも考えられます。
植え付けの時期は、春~秋の生育期であれば、いつでも可能です。また、芽が動き出す前の3月頃や梅雨時期は、より植え付けに適していると言えます。芽吹く力が強い剛健な性質の為、土壌を選ばすに生育することが出来ますが、粘土質のやや重い湿潤な土壌で栽培するとより良いです。
逆に乾燥する土壌では、生育がかんばしくなく、花付きが悪くなり、枝もあまり多くは出ません。また、本来は日当りの良い場所を好みますが、多少の日陰であっても問題なく生育することが出来ます。
植え付けて間もない頃は、土が乾燥し過ぎないように注意しますが、根付いた後は、基本的に水やりの必要はありません。しかし、極端に乾燥する場所や夏に日照りが続くようなら、朝か夕方に水やりを行います。
肥料も特に施す必要はありませんが、葉色が薄くなった場合は、2〜3月頃に寒肥(化成肥料)を株元にばらまいておけば十分です。公害や潮風にも強く、活着すれば旺盛に生育し、刈り込みにもよく耐えます。殆どが、生け垣(プリベット)として利用されるので、鉢植えでは栽培されません。
剪定・増やし方
芽吹く力が非常に強く、放っておくと噴水のように枝が伸び、すぐに樹形が乱れる為、こまめな刈り込みをして、整える必要があります。常に生垣の形を保つには、一年に2~4回の剪定を行う必要があります。間延びした枝や幹から勢いよく伸びる枝は、見つけ次第、枝元から切り落とします。
また、切り戻しにも強く、少々枝が短くなっても新芽が伸びるので、思い切った刈り込みをしても大丈夫です。剪定の時期は、真冬の厳寒期以外であれば、いつでも可能です。ただし、花を鑑賞する場合は、花後の6月下旬~7月頃に行うなど、なるべく早い時期に一回目の剪定をします。
秋に伸びすぎた枝は、10月頃に軽い剪定を行うことで、冬は自然な樹形で越冬させることが出来ます。花芽は、春先3月頃から伸び始めた若い枝に付きます。増やし方は、種蒔きと挿し木が有効です。
秋に果実を採取し、 果肉を完全に取り除いた後、水で洗い流し種だけにして、乾かさないように貯蔵します。種が乾燥してしまうと、発芽率が落ちるので注意します。4月頃に、赤玉土小粒などに種付けをした後、たっぷりと水やりをして、戸外で管理します。
挿し木は6~7月頃か、または9月に行います。柔らかい新芽は避けるようにして、組織が充実し固まった新芽を使います。伸びた枝の5~10cm程度を切り取り、下方部分に葉が付いていれば、取り除いておきます。この際には、決してむしらず、切り取るようにします。
また、花蕾や花がらがある場合も取り除きます。その後、植物成長調整剤を入れた水に1時間程度浸けた後、挿し木用の土や赤玉土小粒に挿し入れます。たっぷりと水やりをして、日陰で管理します。
梅雨期など、時期がよければ地面に直接挿しても生長しますが、出来るだけ乾燥の少ない西日の当たらない場所を選ぶようにします。発根の具合を見ながら、序々に光や風を当てて、 芽や根が伸びてきたら薄めの液肥を与えるようにします。
生け垣(プリベット)の作り方
腐植質がたっぷり含まれた肥沃な土を好むので、予め植え付ける場所には、腐葉土や元肥を施し、十分な土壌改良をしておきます。植え付ける場所に縄を張り、その縄に沿って、2m前後の間隔で杭を打ち込みます。杭の長さは、最終的な生け垣の高さよりも短いものを使用します。
樹高50cm程度の苗木を50cmの間隔で、杭の外側に植え付けていきます。詰めすぎると窮屈になり、成長を見越して離しすぎると隙間が目立つので、位置決めは慎重に行います。次に、竹などの支柱を地面と平行になるように、2〜3本渡し、縄で杭に固定します。
支柱と苗の幹を縛り、株がぐらつかないように固定すれば、完成です。苗木が根付くまでには、大体2~3年程度かかります。根付いてくる頃には、ちょうど支柱や縄はボロボロになっています。根付いた後は、支柱の必要はありません。
病虫害
ネズミモチの病虫害は少ないですが、葉に暗褐色の円形の斑紋が出来た後、黒く大きく変化する「斑紋病」や、葉や茎がうどん粉をかけたように白くなる症状のウドンコ病にかかる場合もあります。これらの病気になった場合は、病気の葉を切り落とし、風通しを良くする為、剪定を行います。
予め薬剤を散布しておくなど、予防をしておくと良いです。また、マエアカスカシノメイガという蛾が、葉に卵を産み付け、糸を巻き付けている場合があります。中の幼虫は、新芽などを食害する為、見つけ次第駆除するか、薬剤を散布して予防しておきます。
他にも、ネズミモチの果実は、通常12~2月頃に黒紫色になった後、地上へ落下しますが、 いつまでも緑色をしている果実があります。これは、ネズミモチミミドリフシと呼ばれる、タマバエの幼虫が果実内にいて、虫こぶになっている為です。
ネズミモチの歴史
ネズミモチ(鼠黐・Ligustrum japonicum)は、モクセイ科イボタノキ属の樹木です。 生長すると樹高が4~7mほどになる、常緑の小高木です。原産は日本、台湾、そして中国です。日本では本州、四国、九州や琉球列島に分布し、生息地は主に太平洋側沿岸の山野です。
芽吹く力が非常に強く、生育は早いです。日陰でも育ち、土質も選ばない為、剪定して好みの樹形に仕立てることが出来ることから、古くから生垣や庭木などに利用されてきました。洋風な庭園が増えると共に、植えられる機会も減りましたが、最近では「プリベット」という英名で、再び注目されています。
プリベットとは、生垣や刈り込みものとして利用される、モクセイ科イボタノキ属の樹木の英名です。葉色が異なる種類が幾つか存在し、特に葉に白い斑が入る、「シルバープリベット(Ligustrum sinense Variegatum)」は、周囲を明るく演出してくれます。
他にも、黄色とライム色の混じる葉が特徴のレモンライムなども含まれます。大気汚染にもよく耐え、道路沿いや工場の敷地内の緑化樹としても、広く利用されます。その剛健な性質からメリットは多いですが、外見上の姿がパッとしない為、庭木にするならば、葉に斑が入るシルバープリベットなどの方が鑑賞価値は高いです。
また、中国原産のトウネズミモチに、非常によく似ていることから、混合されることも多いです。日に翳し、葉裏から見てみると、本種は葉脈が透けて見えません。一方、トウネズミモチは、葉脈が透けて見えることから別種と判断出来ます。他にも、本種の果実は楕円形をしていることに比べ、トウネズミモチは球形に近い果実が成ります。
ネズミモチの特徴
樹高4~7mほどになる為、低木の中でも大型に分類されます。沢山の横枝を出すので、塊状の樹形に育ちます。葉はハッキリと対生し、長さは4~8cm程度です。先端が尖った楕円形をしており、両面無毛の厚手の葉で、表面には艶があります。
強い日光を受け続けると、丸みを帯びる傾向があります。中国原産のトウネズミモチと非常によく似ていることから、時に混合されます。葉を日に翳して裏から見ると、本種は葉脈が透けて見えないので、別種と判断出来ます。
また、5月の終わり頃から6月一杯に掛けて、 小さな白い花を密集して咲かせます。花序は円錐形をしており、1つ1つの花の直径は5~6mm程度です。先端が4つに分かれて反り返り、ラッパ状をします。雄しべは、中央の花柱の筒から2本伸びます。
果実は、黒紫色の楕円形をしており、秋頃に成ります。全長8~10mm程度で、初めは緑色をしていますが、表面に粉を吹き始め、部分的に黒紫を帯び始め、次第に果実全体が黒く熟します。花の数に比べて結実数が少ない場合が多く、日当たりの良くない場所では、特に少なくなります。
また、中国原産のトウネズミモチの果実に比べると、表面の光沢がない点に違いがあります。幹は灰褐色をしており、皮全体に粒状の皮目と多数の小さな割れ目が存在します。若枝の段階では、灰白褐色で表面が滑らかな状態ですが、生長するに従い、皮目と割れ目が出始め、次第に褐色を帯びます。
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