奇想天外(ウェルウィッチア)の育て方
育てる環境について
育てる環境として注視しなくてはいけないのが、温度と水です。温度については、熱帯地域の植物であるため日本の夏でも十分に育つことができます。そのとき日光に当たるとより成長スピードが早くなります。そのため、夏は大丈夫ですが、問題となるのが冬です。20℃以上ならば成長しますが、それ以下だと成長が止まります。
さらに10℃以下になると枯れる可能性が高まってきます。そのため、なるべく一年を通して20℃以上になるよう維持し続けることが重要と成ります。また水については、「砂漠地帯が原産地なのだから乾燥しても大丈夫」と考える人がいますが、それは間違いです。すでに述べたとおり根を深く伸ばして地下水を得て成長します。
水は必要不可欠な植物となり、万が一水不足になってしまうと枯れてしまいます。そのため、ウェルウィッチアを育てるときは基本的には腰水が良いとされています。このように気温と水の環境から考えると日本で栽培するのならば、基本的に鉢植えで育てるのが最適となります。
というのも、室内で気温を管理することで安定的に育てることができるからです。ただし、普通の鉢植えではダメです。というのも、ゴボウのような根を伸ばしていくため深い植木鉢でなくてはなりません。もしも底の浅い鉢植えで育ててしまうと、伸びた根が圧迫して傷んでしまいそこから根腐れしてしまう可能性もあります。最低でも20~30cmの深さのある鉢植えを利用するのが良いです。
種付けや水やり、肥料について
水やりは、すでに少し述べたように腰水が最適です。腰水とは鉢植えで育てるときの方法の一つです。タライやトレイなどに水を張り、そこにウェルウィッチアを植えた鉢を入れます。腰にまで水が使っているため、腰水と呼ばれています。そうすることで常に土に水分を与えるため、大量の水を必要とする植物に適した育て方です。ただし、腰水にするためには鉢植えにも工夫が必要です。
まず一番底に大粒の砂利を敷きます。その上に椰子繊維マットなどの敷いて、鉢底から根が出て行くのを防ぎます。それから用土を入れていくわけです。上手く腰水ができていれば、用土が水を吸い上げてくれるため表面も湿った状態になりますし、鉢底から土が流出していなければタライの水が濁りません。このようにして腰水にすることで水やりをする必要もなく、常に水で満たされた状態に出来ます。
もちろん、タライの水が減れば足す必要がありますし、1~2ヶ月に1度は衛生的にするために水を入れ替えるほうが良いです。そして、この腰水は季節を問わず継続していくことが肝心です。そもそも20℃以上に管理している状態にする必要があるため、
ウェルウィッチアにとっては季節の変化はあまりありません。そして、砂漠の痩せた土地で自生していたのに肥料は非常に効果があると言われています。そのため、月に1~2度は市販されている液肥を適量与えるといいです。もちろん、これも季節を問わずに行う必要があります。
増やし方や害虫について
ウェルウィッチアの増やし方として種を作る方法があります。しかし、この植物は雌雄異株であるため、雌株と雄株の2つが必要となります。さらに受粉は自然界では風や昆虫によって行われますが、室内で育てているとそれは期待できません。そのため人工的に受粉させなくては結実させることができません。
さらに、仮に実がなり種ができます。その種子は水に漬けることは厳禁となります。ただし、種を撒いてから数週間は土に湿り気を与えておかなくてはなりません。そのため、撒いたときから腰水を行っていたほうが良いかもしれません。害虫については常に土を湿らせているため、どうしてもカイガラムシが発生しやすくなります。
特に葉の付け根は土に接しやすいため、影響を受けやすいです。このカイガラムシの排泄物が細菌の増殖を助長してスス病などの二次被害を及ぼす可能性も考えられます。そのため、カイガラムシの予防と駆除は行っておいたほうが良いです。カイガラムシの幼虫を見つけたときは、オルトラン乳剤・アクテリック乳剤・スミチオン乳剤・マシン油乳剤が、
それ以外のときはマシン油乳剤が効果的と言われています。特にマシン油乳剤は毒性はなく窒息させて防除することができます。室内で育てることが多いウェルウィッチアは、なるべく安全性に配慮してマシン油乳剤を利用するのがベストかもしれません。そうすることで何十年・何百年とウェルウィッチアも成長し続けてくれるはずです。
奇想天外(ウェルウィッチア)の歴史
ウェルウィッチアは生息地をアフリカのアンゴラ及びナミビアのナミブ砂漠にしている裸子植物の一つです。日本では2つの和名があります。砂漠地帯なのに年中緑の葉を付けていることから、「砂漠万年青(サバクオモト)」が一つです。たぶん、もう一つのほうが有名かもしれません。それは植物の姿形から名づけられた「奇想天外(キソウテンガイ)」です。動植物の名前とはかけ離れた名前です。
それもそのはず、シーラカンスのように「生きた化石」と呼ばれており、その姿は約1億年からほとんど変わっていないと言われています。このインパクトのあるネーミングから、意外にも知っている日本人も少なくありません。さらに、この植物の寿命は2000年以上と考えられており、まさに奇想天外です。
ただワシントン条約の附属書IIに掲載されています。別に絶滅に瀕しているわけではありませんが、長寿である一方で非常に繁殖力が弱いため、若い苗木が育っていないためです。自生地で育っている株のほとんどが数百年以上前から育っています。では、ワシントン条約ということは日本で育てられないのかというと、そうでもありません。
日本の植物園などでも観賞することもできますし、自宅で育てることもできます。ただし、普通の植物と違った育て方をする必要があるため、何かと工夫をする必要があります。これを上手に栽培知ることができれば、自宅に「生きた化石」を育てることができるわけです。
奇想天外(ウェルウィッチア)の特徴
ウェルウィッチアの特徴と言うとやはりその姿にあります。成長した写真などを見ると一見曲がりくねった葉が幾重にも重なっているように見えるかもしれません。しかし、実は葉っぱは2枚しかありません。葉が成長してくると自然に縦に裂けていきます。自然界のものはその残骸が残っているため、奇想天外な姿に見えるわけです。
そのため、人工で栽培されているウェルウィッチアはその残骸を取り除いているため、2つの葉っぱのシンプルな植物に見えます。花は松と同じ裸子植物であるため、松ぼっくりのような花を咲かせます。しかし、松と違って赤い色をしているため、観賞用としても適しているかもしれません。
また分類上樹木とされていますが、高さは1.5mを超えることはありません。先ほど述べたように葉っぱが成長しては切り離されるの繰り返しとなります。そのため、数千年生き続けた個体であっても、それほど大きくはありません。そして、根っこはごぼうのように長く伸びているのも特徴と言えます。
一般的に砂漠の原産地の植物と言えばサボテンなどの多肉植物をイメージする人が多いですが、ウェルウィッチアは違います。それでもなぜ砂漠地帯で育つかと言うと、その根にあります。長く伸びて砂漠の地下深くにある地下水を吸い取って成長していくわけです。このような植物は決して多くはありません。このように葉っぱも花も根っこも全てにおいて奇想天外な植物なのが、ウェルウィッチアです。
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