ヘレボルス・チベタヌスの育て方
育てる環境について
ヘレボルス・チベタヌスは中国の四川省の山奥で育つ高山エリアを生息地とするアジア原産のヘレボルスです。雪解け水が豊富な地域で春の新鮮な水と空気の中で育っていきます。葉や花の成長のために多くの水分を必要とするので、四川省の雪解け水が豊富な地域が必要です。
育成をやめて休眠期に入るときも同じようにたくさんの水分を必要として、自生している地域では稜線から急斜面で雪解け水が滑り降りてきて育成地に流れ込み、流れていく場所になっています。このように冷涼で水分がたっぷりある地域で育ち、夏になると地上部が枯れてしまう花ですので、日本で栽培する場合には高温多湿の夏をどう乗り切るかが育て方の重要なポイントとなるでしょう。
水分をたっぷり与えながら、排水を確保しなくてはならないので、鉢植え栽培にして夏の高温多湿の時期には日陰や室内に取り込んで休ませる工夫が必要と言えるでしょう。鉢植えの場合は棚の上におかずに地表に接するようにおきましょう。直射日光が当たる場所ではなく、木漏れ日が当たる程度の日照がよく、場合によっては30%程遮光するのが良いでしょう。
開花するまでは日当たりが良い場所においても大丈夫ですが、水分の不足を補うために鉢の表面にミズゴケを敷き詰めてマルチングしておくと安心です。地植えの場合には山野草を扱うイメージで管理します。ほかのクリスマスローズと一緒に植えるよりはエビネなどの管理方法を参考にして水やりなどをしましょう。
種付けや水やり、肥料について
植え付けの際の用土は排水がよく、同時に水分をたくさん必要とする品種ですので保水もできる用土を選びましょう。これは山野草を育てる時の土作りの条件ともなります。バーク堆肥に軽石、川砂を混ぜて作った用土我欲赤玉土を混ぜ込むケースもあります。水やりはいつでも適度な湿度を保てるように注意してやります。
いつでも水遣りできるような環境を整えて、真夏などは特に気がついたときはすぐに潅水してやりましょう。排水の良い土に植え付けておけば水をたくさん上げても根腐れすることはまずありません。その代わりに川砂やバーク堆肥、赤玉土などを用いて排水の効果がある用土に植え付けましょう。
肥料に関しては特に必要ありませんが、花が咲き終わったところから葉が枯れ落ちるまでの間に、数回液肥を希釈してやりましょう。花後に固形の油かすを置くのも効果的です。ただし窒素分の多い肥料を与えすぎると株が軟弱になってしまうので注意が必要です。もともと水が豊富な地域で育ってきた品種です。水切れを起こすとすぐに枯れてしまうので、
いかに水切れを起こさずに管理できるかが重要になります。チベタヌスは1月くらいに地中から芽を出しますが、赤い先端の芽が現れて3月くらいにいきなり芽が割れてピンクの花を広げて成長し始めます。その後種が熟し割れ散って、6月から7月には地上部が枯れて消えてしまいます。この時枯れてなくなってしまったかと思われてしまいがちですが地中の中で春に向けての準備を始めています。
増やし方や害虫について
ヘレボルス・チベタヌスは早春に咲いて夏には地上部が枯れてしまうため、ほとんど害虫がつきませんが、ウイルス性の病気にかかることがありますので注意が必要です。葉が斑に黒くなるウイルスにかかってしまった株が出たら、ほかの株から遠ざけて処分しましょう。購入するのは現在のところ輸入株がほとんどです。
市販されているチベタヌスの多くの苗が中国四川省からの輸入苗です。そのため、しっかりと選んで良い株を購入する必要があります。根の切断部分が正しいものや芽が早く動きすぎていないものを選びましょう。花芽が大きなものを選んで購入します。ヘレボルス・チベタヌスは花が咲き終わったあと実がなりますが、
自然に飛び散ったこの実が芽を出し花を咲かせるのはなかなか難しいものがあるようです。花が咲いたら袋をかけて結実した種を採取して、パーライトなどの苗床で管理して芽を出させるほうが確実と言えるでしょう。栽培環境が日本と原産地ではかなり違うために、山野草として管理栽培するのがポイントです。
このチベタヌスを使って品種改良された多くのヘレボルスがあります。ヘレボルスは実生からどのような花が咲くのか、咲いてみるまでわからないようなところが有り、大変栽培の楽しみが多いのが特徴です。ヘレボルス・ニゲル、ヘレボルス・チベタヌスといった原種は現在出回っている多くの園芸品種のヘレボルスの元となっており、そのカラーや特性をより育てやすく楽しめるヘレボルスを作り出しています。
ヘレボルス・チベタヌスの歴史
ヘレボルス・チベタヌスはキンポウゲ科ヘレボルス属の多年草ですので多くのヘレボルスの品種がヨーロッパに生息地としているのに対して中国を中心としたアジアに分布しているのが特徴です。ヘレボルス類は別名クリスマスローズと呼ばれ、クリスマスの頃に開花するものが多く見られます。
なぜクリスマスローズと呼ばれるようになったかというとヨーロッパに伝わる伝説が歴史の由来となっています。キリストが誕生した時にたくさんの人がなにかお祝いを持って祝福したのに対し、貧しい羊飼いの娘は祝福するプレゼントがありませんでした。クリスマスの季節で一輪の花さえ見つけることができなかった少女が涙を流すと、その涙が種となり芽が出て花が咲き、まるでバラのような美しさでした。
幸せな気持ちで少女は花を摘み、生まれたイエスを祝福し手渡すことが出来たといいます。それ以来ヘレボラスはクリスマスの頃に咲く花、クリスマスローズと呼ばれるようになり、キリストの象徴ともなりました。またヘレボラスの歴史は古くその毒を利用して矢の先に塗り動物の狩りをするのに役立てられたということです。
また中世のヨーロッパでは病気の人に飲ませたり悪魔祓いにも使われたということです。日本では明治時代にヘレボラスが伝わり薬用の植物として使われました。日本でも古くから愛されて、多くの方が栽培して品種改良を行ってきました。ナーサリーではなくても実生からさまざまな品種を作り出せる魅力に人気が集まっています。
ヘレボルス・チベタヌスの特徴
ヘレボルス・チベタヌスはアジア原産のクリスマスローズの仲間です。多くのヘレボルスが地中海沿岸やヨーロッパを生息地としているのに対してヘレボルス・チベタヌスは中国の四川省に一種のみが生息しているアジア原産のヘレボルスです。キンポウゲ科ヘレボルス属の多年草でヘレボルス属は世界中に20種類程生息しています。
アジア原産のチベタヌスは光に透けるように薄い花びらが繊細で美しい品種です。茎は太く瑞々しく雪解けの水をたくさん吸って成長する春先の花です。再発見が遅く幻の花とも言われていましたが、現地では水月花とも呼ばれ親しまれてきました。一般的にヘレボルス類は常緑が特徴ですが、このチベタヌスは夏に落葉する珍しいヘレボルスです。
その育成はまるで福寿草に似ていて早春に咲くところも含めて大変多くの共通点があります。高山の雪解け水が豊富な地域で、林に水が流れると苔むした原生林になりますが、このヘレボルス・チベタヌスは育成されます。ヨーロッパ系のヘレボルス・ニゲルなどとは育成の環境が違うために若干栽培方法も違いがあります。
花径は3センチほどで淡いピンクの花を付けますが花のように見えるのが実は萼片で5枚の萼により構成されています。葉は手のひらのような形で柔らかく、ぎざぎざが入っているのが特徴です。花が咲き終わると袋状の袋果ができ、この中に種が入っていて熟して弾けることで自然に増えていきます。夏に地上部が枯れて休眠するため、長く幻の花とされてきました。
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